星野リゾート(代表:星野佳路)は2016年7月20日、東京都千代田区大手町に日本旅館「星のや東京」を開業した。
商社や金融機関、新聞社が入る高層ビルが居並ぶ大手町の一角に生まれた「和の空間」。この「星のや東京」のコンセプトは「塔の日本旅館」だ。都心部ゆえ、平屋木造とはいかないが、地上17階・地下2階の縦の空間に旅館の要素が存分に組み込まれた。
周辺には、すでにアマン東京、パレスホテルといった高級ホテルが立地しているが、星のや東京に続き、17年には高級サービスアパートメントのアスコット・ザ・レジデンスが、20年にはフォーシーズンズホテルが進出するため、ビジネス街だった大手町は今後、新たな高級アーバンリゾートエリアとして変貌を遂げていきそうだ。
では、「日本旅館」である星のや東京の特徴とは何か。あらためてホテルとの違いをふまえて、クローズアップしてみよう。
1:都心に湧く本物の温泉
1点目は、何と言っても「温泉大浴場」。場所柄から温泉のイメージとは遠いが、星のや東京の最上階17階には本格的な温泉が湧く。泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」。やや黄味がかったナトリウム成分の多い温泉で、舐めると塩からい。温泉法基準の27倍もの成分が溶け込んだとてもよい湯で、とろみがあって湯冷めしにくい。本格的な温泉の満たされた温泉大浴場で手足を伸ばせるのは、旅館の醍醐味だろう。
2:靴を脱いでゆったり寛ぐ
2点目は、「靴を脱いで過ごす」こと。星のや東京でも、大きなヒバの木扉を一歩入った玄関で靴を脱ぐ。そこからは畳廊下が続いていて、裸足のまま過ごすことができる。ベッドサイドでしか靴は脱がないホテルとは違う、畳文化に基く日本旅館の特徴だ。そして、浴衣で滞在できる点も旅館ならではだ。星のや東京では、浴衣ではなく、外国人でもすぐに羽織れる着物と帯、インナーの館内着が各部屋に用意されている。
3:日本の四季を感じる室礼と木の文化
3点目は、「室礼(しつらい)」と「木の文化」。四季・七十二候のある日本には、折々のしつらいの文化がある。星のや東京でも、玄関を入った正面等に季節のしつらいが施されている。また、館内を歩くと気づくのが、木の香り。ヒバ、栗、竹をオブジェや家具でふんだんに使うことで、元来木造であった日本旅館の香りを再現している。客室のちょっとした小物に職人の技が息づいている。
4:大の字になれる畳の和室
4点目は、「畳の和室」。各部屋にはベッドが設えられてはいるが、畳ゆえ、もちろん床にもごろんと転がり手足を伸ばすこともできる。座ったり、寝転んだり。床に大の字になれることも旅館ならではの寛ぎだ。
星のや東京の客室には、粋な工夫がいくつかある。ひとつはオートロックをOFFにできる機能。例えば、おばあちゃんが宿泊する隣の部屋に孫が遊びに行く時など、ちょこちょこと部屋を出入りする時など欲しい機能だ。旅館にオートロックは似合わない。
客室の障子越しの窓は江戸小紋のモチーフで外からは見えにくくなっている。バスルームはスモークガラスがブラインド代わり、遮光はロールスクリーン。カーテンやブラインドといった洋風の家具を排している。その他の工夫はぜひ現地で確かめて欲しい。
5:24時間オープンの「お茶の間ラウンジ」
5点目の特徴は、各客室階のエレベーター前にある「お茶の間ラウンジ」だ。
旅館には仲居がいるものだが、星のや東京には仲居はいない。また、スタッフが客室に出入りすることも原則としてない。この点はホテルと同じだ。しかし、星のや東京の特徴である「お茶の間ラウンジ」には「お茶の間さん」がおり、仲居代わりの役割を果たす。
24時間オープンのお茶の間ラウンジは、その名のとおり、ちょっとのどが渇いた時、小腹がすいた時にやってきて過ごす場所。ここに常駐するお茶の間さんは、冷蔵庫にはいつも冷たいフリードリンクを入れておいてくれる。夕方にはおすすめの佳酒、朝にはおにぎり、そしてお出かけ前にはコーヒーを用意してくれる。ちゃぶ台代わりのテーブルにはあちこちコンセントもついていて、Wi-fiを使えばワーキングスペースにもなるハイブリッドなラウンジだ。
こんな特徴のある「星のや東京」。紹介しきれなかった館内の工夫はまだ数多くあるので、ぜひ泊まった時のお楽しみにしてほしい。
星のや東京
http://hoshinoya.com/
住所:東京都千代田区大手町1-9-1
星のや総合予約:0570-073-066
全84室/パブリック施設:温泉・スパ・メインダイニング・講堂
チェックイン 15:00 チェックアウト 12:00
料金:1泊1室78,000円~(税・サービス料込、食事別)
交通:東京メトロ大手町駅A1またはC1出口より徒歩2分/地下駐車場あり
※All About「旅館」では、宿泊体験記を後日アップ予定です