「受ける力」はリーダーとしての重要な資質のひとつ
内閣支持率急降下の一因である加計学園を巡る疑惑解明等に関連して、国会は閉会中審査を開催し、安倍首相が与野党の厳しい追求に答える姿がテレビでも生中継されました。また先日は、野党第一党の党首である蓮舫議員が、不明確なまま置き去られていた自らの二重国籍問題に関して記者会見を行うという場面も中継されました。
こういった場面で問われるのが、リーダーとしての重要な資質のひとつである「受ける力」というものです。「攻める力」というものがこれと対をなす存在なのですが、政治家だけでなく企業経営者でも、「攻める力」と「受ける力」のバランスがとれている人物は意外と少ないように感じています。
「攻める力」には長けているのに……
「攻める力」とは、自身が攻められる立場にない時に発揮する敵対する相手を撃破しつつ前向きに突き進む力です。一方の「受ける力」は、自分が攻め立てられる立場に立った際に、逃げることなくこれを上手に受け止め、あるいは速やかに沈静化に向かわせ、あるいは攻めに転じさせる力のことです。
業績を進展させ企業を成長させた企業経営者の多くは「攻める力」に長け、大臣クラスや党幹部クラスに登りつめる多く政治家もまた同じです。しかし、一旦攻守入れ替わり受けに回った途端、一気に劣勢に陥り一敗地に塗れてしまう人も多いのです。経営者でも政治家でも、名リーダーたる重要要件はこの「受ける力」にこそあるのかもしれません。
不祥事を機に落ちたA社と伸びたC社。その違いは?
随分前の話になりますが、上場製造業A社で重篤な危険に至りかねない製品不良の不祥事が発生しました。当時の社長B氏はワンマンの唯我独尊タイプで、一貫した強気の攻め姿勢で業績を順調に伸ばし業界首位の地位を築いていました。しかし不祥事発生でマスコミの取材攻勢に会うと、歯切れの悪さばかりが目立ち社会批判にさらされ、遂には精神的に追い込まれて入院。最終的に辞任の憂き目に遭ったのです。
同時期にライバルC社でも同様の製品不良が発覚し、事態は大きな社会問題に発展するかのような様相を呈しました。ところが、C社のD社長のマスコミ対応は実直かつ明快、実に見事で、先のB社長とは好対照の対応にメディアも好意的に反応。C社のブランドイメージはほとんど毀損することなく収束させました。D社長の危機管理能力が功を奏して、その後業界シェアでもA社を逆転するに至ったのです。
「受ける力」=〇〇な気持ちで受けて立つこと
その何年か後のことですが、とあるセミナーで危機管理をテーマとしてD社長のお話を聞く機会を得ました。そこで私は、セミナー終盤の質疑応答でどうしても聞いてみたかった質問をぶつけてみました。
「一大不祥事で逃げたり慌てたりして失敗する経営者が多い中で、社長はどうしてあのような堂々たる対応できたのですか」
この質問にD社長は、当たり前といった表情で答えてくれました。
「ポイントはただひとつ、正直、それに尽きます。周囲から攻められた時に、受ける姿勢としてはとにかく正直が一番強い。正直で失うものは何もありませんが、ウソはバレれば全てを失います。正直を忘れず相対するなら何も恐れる必要はありません。ウソやごまかしでその場を切り抜けようとするから、逃げたり、慌てたり、焦ったりして取り返しのつかないことになるのです」
強いリーダーに求められる「受ける力」とは、結局のところ何事にも正直な気持ちで受けて立つ姿勢のことなのだとは、目からウロコが落ちる思いでした。攻めを受けた途端に、発言が不明瞭になったりボロが出たりの政治家先生方にも、ぜひお聞かせしたいお話であります。