EVベンチャーの「GLM」が量産車世界初搭載を目指す
2017年7月1日から導入される自動車保安基準改正により、「樹脂製フロントウインドウ」の採用が認められる。量産車で世界初搭載を目指すのがEVベンチャーのGLM。従来のガラス製フロントウインドウとの違いや利点、技術的な課題に迫ってみた。
なぜ樹脂製フロントウインドウを採用するのか?
クルマの軽量化は、燃費の向上をはじめ、動力性能やハンドリングなどの「走り」の面にも基本的にはよい影響をもたらす。軽量化はクルマにとって昔も今も課題のひとつで、各メーカーが注力している。
材料やパーツなどの小型、薄型化だけでなく、素材や材料そのものを変える「材料置換」が有効な手段で、ボディであればスチール(鉄)からアルミや炭素繊維強化プラスチックなどが高級車を中心にすでに実用化されている。
2017年6月28日、京都のEVベンチャーである「GLM」が「人とくるまのテクノロジー展名古屋2017」(名古屋市)」で初披露したのが、「樹脂製フロントウインドウ」を搭載したEVスポーツカーのトミーカイラZZ(試作車)。樹脂製フロントウインドウの技術は、帝人によるもので、GLMでは帝人以外でも旭化成など、日本メーカーの技術を最大限活用している。
樹脂製フロントウインドウの利点とは?
写真を見ると分かるように、単にガラス製から樹脂製に入れ替わっただけでなく、Aピラーと呼ばれる「柱」がなくなり、すっきりした見た目と、斜め前を中心とした良好な視界を手に入れている。
利点としては、軽量化をはじめ、デザインの自由度も高まり、先述したように前方視界の向上も期待できそうだ。しかし、Aピラー(柱)はクルマの強度(剛性)を確保する上で欠かせない重要な構造物であり、Aピラーがなくて大丈夫なのか? という疑問が浮かぶ。
その前に軽量化に関しては、今回の樹脂製フロントウインドウは従来のガラス製フロントウインドウより3割以上も軽く、Aピラーやガラス窓、ルームミラーを合わせた重量(18.4kg)に比べて、樹脂ウインドウを搭載した車両は6.6kgも軽くなるという。
さらに、樹脂製フロントウインドウは、ガラス製よりも高い強度があるため、窓周辺のフレーム枠(Aピラー)がなくても剛性を確保できるそうだ。
厳しい基準…採用には技術的課題もあった
樹脂製フロントウインドウの採用には、課題もあったという。2017年7月から導入される新保安基準には、法規的にはフロントウインドウへの搭載が認められたものの、これまで以上に厳しい耐摩耗性が求められる。
ゴムと窓をこすりあわせて摩耗を調べる試験において、摩耗を2%未満にする必要があり、耐摩耗性が5~7%であった従来の樹脂の加工法では満たせなかったという。
今回、トミーカイラZZに搭載された帝人の樹脂製ウインドウは、透明性が高いPC樹脂にさらに保護層を作る技術を採用している。さらに、耐摩耗性を0.5~1.5%の耐摩耗性を実現し、これは強化ガラス(耐摩耗性0.5~1.0%)並みに傷つきにくい高い耐摩耗性というから驚きだ。
軽量化を筆頭に、デザインや視界など、メリットの多い樹脂製フロントウインドウ。GLMでは近く、公道を走行するための国内認証を取得する予定だそうで、今秋を目途に、樹脂製フロントウインドウを搭載した特別仕様車のトミーカイラZZを販売する計画としている。
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