高級スポーツカーブランド「アウディ スポーツ」が上陸
今春、アウディがRS3セダン、TT RSクーペ/TT RSロードスター、R8スパイダーという新モデルを一挙に発表した。さらに、日本のレースシーンにも精力的にマシンを投入し、各チームをサポートすると表明した。その中核を担うのがモータースポーツ、そして市販車を発売する「Audi Sport(アウディ スポーツ)」だ。
2016年、アウディが日本にも上陸させたサブブランド「Audi Sport(アウディ スポーツ)」。モータースポーツ活動だけでなく、市販モデルの発売、グッズ販売まで手がけるなど、同社のスポーティイメージを一手に引き受ける新ブランド。
3月末、「Audi Sport」から新たにRS3セダン、TT RSクーペ/TT RSロードスター、R8スパイダーが加わり、順次発売を開始している。
メルセデス・ベンツやBMW、ボルボも注力。理由は?
「Audi」ブランドに加えて、「Audi Sport」の専売店も全国に構築するなど、非常に力が入っているのが目を引く。メルセデス・ベンツの「AMG」、BMWの「M」や「M Sport」モデル、ボルボの「ポールスター」など各ブランドが注力しているのがスポーツ系モデルなのだ。
エコカー全盛のいま、各社はなぜ燃費が悪そうなイメージのあるスポーツカーの品揃えを充実させるのだろうか。
営業利益率の高いスポーツモデル
1つは、収益に対する貢献度の高さだ。性能や装備を引き上げてスポーツ仕様に仕立てれば1台あたりの収益性が大きく向上する。2016年にトヨタ・グループを抜き世界一の自動車メーカーになったフォルクスワーゲン・グループ。その中で営業利益率はポルシェが17.4%と抜きんでていて、アウディは8.2%、フォルクスワーゲンは4.5%となっている。
ポルシェの成長を支えているのはスポーツカーだけなく、カイエンやマカンというSUVやパナメーラというサルーンだが、共通するのはスポーティで高付加価値(つまり高いモデル)。
アウディは、コンパクトハッチバックからセダン、ワゴン、SUVまで多彩なモデルが揃うが、「Audi Sport」にスポーツイメージを牽引させることで、さらなる利益率向上を図るのが狙いといえるかもしれない。
しかし、利益率が高いとはいえ、高すぎると台数が出なくなってしまう。そこでAudi Sportでは非日常の「スーパースポーツカー」ではなく、毎日乗れる「プレミアムスポーツカー」と定義することで価格を「そこそこに」抑え、台数もある程度確保したいという意図も感じられる。
スポーツモデルで稼いだ収益で燃費技術を磨く
プレミアムスポーツカーという定義であれば、ある程度燃費性能も確保できるし、燃費向上に効く軽量化などのコストもかけやすいという側面もある。
今後さらに燃費規制が強化され、あらゆるクルマの燃費向上が待ったなしとなる。しかし当面は、クルマ1台ずつの燃費ではなく、メーカーの出荷台数を加味した平均燃費である「CAFE(企業平均燃費)」であれば、スポーツカーの燃費をほかのプラグインハイブリッドやEVなどの電動化車両でカバーするという目論見もあるのかもしれない。
いずれにしても高付加価値の高級スポーツカーで稼ぎ、そのお金でさらに軽量化や内燃機関の改良、そして電動化車両を開発するという手法がしばらくは続きそうだ。