国立感染症研究所は、11月7日~11月13日の期間中の感染症発生動向調査を公開した結果、感染性胃腸炎の患者が前週に比べて1.4倍に増えていることが明らかになった。また、東京都福祉保健局は、感染性胃腸炎の都内の患者報告数が増えているとして「流行警報」を発表している。
厚生労働省は、例年12月の中旬頃にピークとなる感染性胃腸炎の多くは、ノロウイルスによるものであると推測されているため、急増するシーズンに備え、感染予防対策について注意をよびかけている。
吐き気や下痢といった症状が伴う感染を予防するためには、どのようなことに注意をすればよいのだろうか。消化器系病気に詳しい医師の染谷貴志氏がAll Aboutの「ノロウイルス・ロタウイルスの症状・感染経路」「ノロウイルス・ロタウイルスの検査・予防・治療法」で、次のように解説している。
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ノロウイルス感染症の感染経路、潜伏期間は?
染谷氏によると、ノロウイルスの感染経路はほとんどが食べ物や食器などからの経口感染で、次のような感染の流れが考えられているという。
■患者からの伝染
飲食物によって感染した患者、あるいはさらにその患者から感染した患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐物から、人の手などを介して二次感染する。人から人への感染のほうが数が多いといわれている。
■飲食物からの感染
ウイルスを溜め込んだ食材(よく言われるのはカキやアサリ、シジミなどの二枚貝など)を食べることや、ウイルスが表面に付着していたり、食器についていたりする食品を食べることで感染する。
感染から発症までの潜伏期間は24~48時間。つまり食事が原因だったとしても、前日もしくは前々日の食事が原因ということになる。
ノロウイルスの感染予防と対策方法は?
染谷氏によると、感染経路を考えると、手洗い、調理器具の衛生管理が重要だという。
■手洗いの方法
手洗いは、調理を行う前、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても必ず)など。石けんを十分泡立て、手の指の間、爪の間、手首などまでしっかり洗うことが大切。通常の水洗いでは落としにくい手の脂等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果がある。
■食品・調理器具の衛生管理方法
現時点で正確な数値はないが、食品の中心温度85度以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされている。そのため、特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い人は、中心部までしっかり加熱することが予防として有効。
集団感染を防ぐためには
家庭内や集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、集団感染を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人の糞便や吐物からの二次感染、ヒトからヒトへの直接感染、飛沫感染を予防する必要がある。ノロウイルス感染による嘔吐、下痢では、嘔吐物、糞便ともに大量にウイルスが存在しているので、その取り扱いには十分注意が必要だと染谷氏は述べている。
「ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐物や糞便は乾燥しないうちに、床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。汚れてしまった洋服、ふとん等は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理する必要があります。
まず使い捨てのマスクと手袋を着用し、便や嘔吐物はペーパータオル等で取り除き、ビニール袋に入れます。残った糞便や嘔吐物の上にペーパータオルをかぶせ、その上から50倍~100倍に薄めた市販の塩素系漂白剤を十分浸るように注ぎ、汚染場所を広げないようにペーパータオルでよく拭きます。そうした後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。下洗いした洋服類の消毒は85度・1分間以上の熱水洗濯が適していますが、家庭であれば普通に洗濯をした後、乾燥機にかける、スチームアイロンを使用するなどの手段も有効です」
ノロウイルス感染症の主な症状は吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱で、通常はこれらの症状が1~2日続いた後で治癒し、後遺症もない。しかし、乳幼児や高齢者の場合には高齢者や乳幼児では重症になることもあるため、予防はしっかりと行いたい。
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