阿蘇山が36年ぶりに爆発的噴火… 日本の活火山リスクを考える

8日午前1時46分、熊本県・阿蘇山の中岳(標高1506メートル)第1火口で爆発的噴火が発生した。阿蘇山のように、日本には多くの「活火山」があり、それに対する監視体制や噴火などに備える姿勢は忘れてはならない。そのリスクや心構えについて解説した。

2月の噴火
阿蘇山では今年2月にもマグマ水蒸気噴火が起きていた

8日午前1時46分、熊本県・阿蘇山の中岳(標高1506メートル)第1火口で爆発的噴火が発生した。気象庁によると、中岳の爆発的噴火は1980年1月26日以来、36年ぶり。また同庁は、阿蘇山に火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げて警戒を呼び掛けている。

  

この噴火により熊本、大分、愛媛、香川の4県で降灰が確認された。熊本県阿蘇市内では降灰による停電が発生したほか、農作物への被害などが出た。また、宿泊施設にはキャンセルが相次いだという。

 

JNNによると、翌9日には中岳の登山道の規制が解除され、火口から約3キロ離れた草千里までは通行可能となった。  

  

阿蘇山のように、日本には多くの「活火山」があり、それに対する監視体制や噴火などに備える姿勢は忘れてはならない。これに関してアウトドアの専門家や災害危機管理アドバイザーが活火山のリスクや心構えをAll Aboutで解説している。

  

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日本には活火山が多くある

アウトドアナビゲーターの渡部郁子氏によると、全国には110の活火山があり、そのうち火山防災のために特に監視・観測体制の充実等が必要であるとして火山噴火予知連絡会によって選定されている活火山を、気象庁が24時間体制で監視しているという。

 

気象庁が24時間体制で監視している活火山は47火山だったが、2014年11月から八甲田山、十和田、弥陀ヶ原の3つが追加となり、整備をしているという。50火山は以下のとおり(★は追加)。

 

北海道地方

アトサヌプリ、雌阿寒岳、大雪山、十勝岳、樽前山、倶多楽、有珠山、北海道駒ヶ岳、恵山

 

東北地方

岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ヶ岳、鳥海山、栗駒山、蔵王山、吾妻山、安達太良山、磐梯山、★八甲田山、★十和田

 

関東・中部地方

那須岳、日光白根山、草津白根山、浅間山、新潟焼山、焼岳、乗鞍岳、御嶽山、白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群、★弥陀ヶ原

 

伊豆・小笠原諸島

伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ヶ島、硫黄島

 

九州地方

鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳、霧島山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島

 

火山活動に関する警戒情報は気象庁が発表しており、全国110の活火山を対象に噴火警報・予報が発表されれば、気象庁サイト内の「防災情報」ページで確認できる。

 

しかしながら、御嶽山の噴火のように、気象庁で事前に火山性地震を計測していたものの、噴火の予兆を判断されない「想定外」の噴火もあると渡部氏は指摘。特に御嶽山は登山初心者も多く訪れる山で、噴火するまでは「警戒レベル1(平常)」だったことから、「御嶽山が活火山であることを知っていたとしても災害を予測し避けることは難しかったはず」と渡部氏は述べている。

 

登山するときの注意点・心構え

渡部氏は社団法人日本山岳ガイド協会理事の竹内敬一氏の言葉を引用しながら、以下のような注意点を挙げている。

  • 登山の際には危険をいち早く察知できるよう、周りの環境にアンテナを張り巡らせ、緊張感を持って臨むことが大切
  • 活火山に登るときに登山者自身が気をつけることは、噴火警報の確認、ガスによる立ち入り規制などを忠実に守ること
  • もし荷物に加えられるなら、携帯用の小ぶりの登山用酸素ボンベや花粉用のマスクを持ち歩くことで、ガスや火山灰から多少でも身を守ることができるかも

  

活火山のリスクを考えながら観光すること

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏も、噴火予測は極めて困難だとしている。また、火口付近には火山性地震が頻繁に起きていない平常時においても、火山性の有毒ガスの発生など、一定のリスクは常に存在していると指摘する。

  

一方で、国内には多くの活火山が存在しており、火山活動を起こしながらも周辺の住民はその恵みを享受して、一定の距離をおきつつ共に生活していることも事実。火山立国とも言える日本において、火山活動は避けられない自然現象とも言えると和田氏は述べ、「リスクを正しく認識した上で、発災時の対応をすれば被害に遭うことはありません。公開されている情報を入手して、安全と考えられる範囲で温泉や観光を存分に楽しみましょう」と述べている。

 

【関連リンク】

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