息子さんに送った「手紙」が書籍になった理由
「余命3カ月」を宣告され闘病中だった山崎元さんが、これからを生きる息子へ、そして、全ての読者に向け、自身が長年追究してきた、お金と人生、幸せについて、いちばん大事なことを、渾身の力を込めて書き下ろした一冊。『経済評論家の父から息子への手紙』は、山崎元さんが大学に合格した息子へ送った手紙をきっかけに生まれたのだとか。
友澤さん(以下敬称略)「2023年3月に、山崎さんから息子さんが大学に合格されたとうれしそうに報告され、『もう大人なので、こんな手紙を書いて送ったんだよ』と、息子さんへの手紙を見せていただいたことから始まりました。ちょうど、山崎さんとライフマネジメントに関する本の企画を一緒に考えていたところで、『お金のことで悩まず、人生を自由にマネジメントできるような本を作りたい』とおっしゃっていました。この手紙の内容がとてもすてきで……! 『手紙のエッセンスを軸に、これからの人生に迷う若い人に向けて本にするのはどうですか』という提案をしたんです」
息子さんへの手紙にある「将来の働き方や稼ぎ方」の部分から、本の内容は決まっていったそうです。
友澤「独自の『ほったらかし投資術』を編み出し、ご自身も転職12回を経ていて、お金と人生設計について語るのは山崎さんの真骨頂です。まずはそこをベースに章だてを考えていきました。 『若い人に、これからの人生に役に立つお金やライフハックを』というテーマに沿って進めたのですが、最初にいただいた草稿は、山崎さんらしいシンプルで明快な文章でした。
それもよかったのですが、『手紙に合わせ、息子さんに語りかけるような文体にしてみませんか。この本は、そのほうが、かえって多くの方に伝わるはずです!』と提案し、ブラッシュアップをお願いしました」
語り掛けるような文体で、お金と人生と幸せを語る山崎流人生術
山崎さんは、あまり内面やプライベートをさらけ出すような本を今まであまり書かれていなかったそうです。
友澤「最初は『ええ、本当にそんな雰囲気でいいの…?』と若干戸惑っていらっしゃいましたね。次第にご本人も筆がノッてきたようで、『成果主義では、無難をめざすよりも、リスクを大きくとる方が有利だ。このマインド・セットがあるかないかは将来の報酬を大きく左右するはずだからよく覚えておけ』などと、ぐいぐいと語り掛けるかたちの原稿ができあがっていきました」
自分の人材価値をどのようにして高めていくか、という部分が印象に残ったと語る友澤さん。
友澤「特に若いうちは、預貯金を増やすより、自分の『稼ぐ力』を高めることが重要です。それにはどうしたらいいか。転職や副業はどのようにするか。社会に出ていく前に知っておくと、周りより一歩リードできる人生のコツ、陥りがちな危険を回避できる方法、そんな山崎流人生術はきっと多くの方に役立つはずです。
同時に、『飲み会のテクニック』や『モテ論』といった社会に出てから大事な人間力が磨かれるというか、ユーモアあふれるアドバイスもたくさん掲載されていて、そこも好きなところですね。行間に、幼いころの息子に好きな球団を聞いたら、『父ちゃんが楽天にいるから楽天』と答えたというほほえましいエピソードが顔をのぞかせたり、人間味を感じられます。実用的だけどエッセイ要素もある、今までにない本になったと思います」
「息子さんへの手紙」を参考にしたとは言え、手紙が書籍に全文掲載されている意外な理由も話されています。
友澤「意外だったのですが、『手紙は全文載せたい』と当初から山崎さんが強く希望されていました。念のため、奥さま、手紙を受け取った息子さんにも確認を取ったうえで、掲載することになりました。プライベートな内容もけっこうあるので本当に載せていいのかな、とも思ったのですが、まさにこの本のスタートでもありメッセージが詰まっていて、山崎さんのお人柄がよく分かる部分なので、載せることができてよかったなと思います。ご家族からも温かいお言葉をいただきました」
山崎さんが残した最後のメッセージが詰まった一冊。あとがきの「幸福の秘訣(ひけつ)」は必読!
「余命3カ月なら、ぜひやっておきたいと思った3つのことのうち1つが本書の執筆でした」ともある、あとがきには心を動かされたそうです。
友澤「この原稿をいただいたときに、山崎さんもとても思い入れを持ってあとがきを作っていただいたと分かって、とても感動し、ありがたいと思いました。そして、山崎さんが人生最後に見つけた、幸福についての『秘訣』に心が震えました。この部分は、ぜひお読みいただきたいです。
山崎さんとはもう20年以上のご縁になります。いろいろなお仕事をご一緒させていただき、その都度ずいぶんわがままを聞いていただいたものです。『せっかく書いたのだから早く読んで!』などと怒られたこともたびたびあります(笑)まさかこんな早いお別れになるなんて思っていなかったので、とてもショックを受けて……でも、とにかく、この本を多くの人に届けないと、と気合が入りましたね」
まさにこれから社会に出る、また社会に出たばかりの若者の皆さんに読んでいただきたい一冊なんだとか。
友澤「若い人、素直な人が資本主義のシステムのなかで、不利な立場になってしまう。山崎さんは、そういったことを常々、苦々しく感じていらっしゃいました。本書には、そうならないために知っておくべきことが詰まっています。そしてこの知恵は、若い人に限らず、全ての人の人生に役立つでしょう。
『お金の心配をせず、自由に気分よく、自分らしく生きていくための明るい人生のマニュアル』にしたい、との思いがこもった一冊です。山崎さんの最後の書き下ろしとなりましたが、楽しく読んで、それぞれの人生に役立てていただけたらうれしいです」
20代を中心に若い人に向けて記された本でありながら、大人も学べるポイントがたくさん。とても読みやすい一冊なので、お金や仕事の悩みがある人ははもちろんですが、人生に悩んでいる人もぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
■書名:『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』
■著:山崎 元
■発行:Gakken
■発売日:2024年2月15日(木)
■定価:1,760円 (税込)