老後の備えが必要な時代
普段から老後生活に向けて準備をしている方も少なくないと思います。特に2019年に公表された金融庁の報告書から話題となった「老後2000万円問題」から、漠然と老後の生活に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
※老後2000万円問題については「老後資金は2000万円必要?その根拠と備え方を解説」で解説しています。
今回は、金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」をもとに、60歳未満の2人以上の世帯が、どのように老後の生活を考えているのか、紹介します。また、老後の生活資金の軸となる年金に対する意識調査も併せて確認していきましょう。
8割以上の人が老後の生活を「心配している」
まず確認するのは「老後の生活についての考え方」です。「全く心配していない」から「非常に心配である」の4つの選択肢で、老後の生活に対する心配の度合いを時系列的に整理しています。
2020年の調査データによれば老後の生活は「非常に心配である(41.5%)」「多少心配である(44.4%)」と9割弱の世帯が不安に思っていることがわかりました。2000年以降、心配に思っている人の割合は継続して約9割で推移しています。
老後の生活を心配している or していない理由
次に、老後の生活を心配している世帯と、していない世帯それぞれの理由を確認します。まずは、老後の生活を心配している世帯の理由がこちらです。
心配している理由の上位3つは下記のようになります。
※3つまでの複数回答のため、総計は100%を超えます。
- 十分な金融資産がないから 73.5%
- 年金や保険が十分ではないから 70.2%
- 退職一時金が十分でないから 40.3%
一方で、老後の生活を心配していない理由の上位3つは下記のようになります。
※3つまでの複数回答のため、総計は100%を超えます。
- 年金や保険があるから 55.1%
- 退職一時金があるから 39.1%
- 十分な金融資産はないが、老後に備えて着々と準備しているから 24.6%
年金に対する考え方
最後に、老後の生活資金に対する意識調査の結果です。まず確認するのは、「老後における生活資金源」です。
「公的年金」を資金源として考える人が80.8%。次いで「就業による収入」という人が49.8%となりました。また、定年までに行った資産運用「企業年金、個人年金、保険金」という答えが40.5%という結果になりました。
次に、資金源として選択した人が多かった上位4つ(公的年金、就業による収入、年金、金融資産の取り崩し)について、時系列的に示したグラフを確認してみましょう。
選択肢として最も多かった「公的年金」は調査開始当初(2007年)から約80%で推移しています。増加傾向にあるのは「就業による収入」で、2007年と比較すると約10%ほど増えているのが分かります。
次に、年金に対する考え方では、「年金でさほど不自由なく暮らせる(5.4%)」「ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる(49.3%)」となり、年金を資金源とした生活が、ある程度成り立つだろうという考えを持っている人が、過半数を占めています。一方で、「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と答える人は44.1%となっています。
「日常生活費程度もまかなうのが難しい(44.1%)」と回答した人の理由はなんでしょうか。難しいと考える人の理由を、時系列的に整理したのが下記となります。
2000年以降、一番多い理由は「年金が支給される金額が切り下げられるとみているから」となっています。
また、2016年からゆとりがない理由として数値が上昇した選択肢は下記3つです。
⇧増えた理由
- 年金が支給される年齢が引き上げられるとみているから 3.4%増加
- 高齢者への医療費用の個人負担が増えるとみているから 4.5%増加
- 高齢者への介護費用の個人負担が増えるとみているから 2.2%増加
以上、今回は、「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」から、60歳未満の2人以上世帯の老後に対する考え方を紹介しました。