ディーゼルエンジンの行方は?
欧州でディーゼルエンジンのシェアがシュリンクしている。きっかけとなったのは、フォルクスワーゲン(グループ)のディーゼル不正問題(ディーゼルエンジンを載せた車の排ガス規制を逃れるため、試験の時に不正なソフトウェアを使っていた問題)だが、背後には都市部を中心とした大気汚染問題もあり、ドイツやフランスでは2030年〜2040年以降、ガソリン車、ディーゼルエンジン車の発売を禁止するという話まで出ている。
ボルボは次世代ディーゼルエンジン開発を断念し、2019年以降、電動化車両へシフトすることを宣言した。そんな中、メルセデス・ベンツのディーゼルエンジンの排ガス不正疑惑が持ち上がっている。
環境規制に対応すべく、各社は電動化車両に注力…
ボルボの例はやや極端だが、欧州勢だけでなく世界中の自動車メーカーが厳しくなる環境規制に対応すべく、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)などの電動化車両に注力している。
長年、欧州で主役だったディーゼルエンジンは、低燃費によるランニングコストの高さ、中・低速域から力強い走りが可能で人気を集めてきた。しかし、排出ガス対策に膨大なコストがかかる上に、フォルクスワーゲンのディーゼルゲート以降、ディーゼルエンジンに注がれる視線が厳しくなっているのは確かだろう。
フォルクスワーゲングループのディーゼル不正問題を受けて、フィラット、クライスラー、ジープ、アルファロメオなどを擁するFCA、そしてFCAからディーゼルエンジンの供給を受けているスズキも欧州で発売しているビターラ(日本名エスクード)が不正疑惑の対象となっている。ほかにも、ルノーなども疑惑を持たれたことがあった。
環境基準に満たすように排出ガスを適正化する?
そして、メルセデス・ベンツを擁するドイツ・ダイムラー社が7月18日、欧州で対象となるディーゼルエンジン車(2011年以降に発売)300万台を回収し、サービスキャンペーンを実施すると発表した。
このサービスキャンペーンは、ソフトウェアをアップデートすることで、環境基準に満たすように排出ガスを適正化するというもの。背景には、排ガス規制を逃れるために不正なソフトウエアを搭載していた疑いが浮上したことにある。
当初は、欧州のみが対象で日本では実施しないとしてきたが、7月21日、ドイツ・ダイムラー社から日本法人であるメルセデス・ベンツ日本に、日本でも同様の対応(サービスキャンペーン)を行うという連絡があったという。
“輸入車ナンバー1”メルセデス・ベンツのマイナス材料に
日本におけるメルセデス・ベンツのディーゼルエンジンは根強い人気があり、2016年は約20%がディーゼルエンジン搭載車だ。対象車種の数は明らかにされていないが、数万台に達するのではという見方も出ている。
日本での対応がサービスキャンペーンで済むのか、強制力のあるリコールまで発展するのかは分からないが、2015年、16年と2年連続で輸入車ナンバー1の座を獲得したメルセデス・ベンツにとって販売減速になりかねない事態になっているのは間違いないだろう。