急性大動脈解離ではC-C-Bの渡辺英樹さんも亡くなっている
6日に東京都豊島区の東京芸術劇場で、上演中の舞台「アザー・デザート・シティーズ」に出演していた俳優の中嶋しゅうさん(69)が、舞台から転落し、搬送先の病院で死亡が確認されました。所属事務所は7日、中嶋さんが舞台から転落した原因が「急性大動脈解離」を発症したことによるものと発表しました。
中嶋さんの妻で女優の鷲尾真知子さんは、所属事務所を通してコメントを発表し、「まだ私自身が信じられない気持ちの中におります」としながらも、7日に東京・明治座で初日を迎える『ふるあめりかに袖はぬらさじ』に予定通り出演しています。
名俳優が舞台上で倒れ、命を奪うということにまでなった急性大動脈解離。この病気では、2015年に「Romanticが止まらない」などのヒット曲で知られたバンド「C-C-B」のリーダー兼ベーシスト、渡辺英樹さんが発症、亡くなっています。急性大動脈解離とはどのようなものなのでしょうか。
この病気については、心臓血管外科専門医の米田正始さんがAll Aboutの『C-C-Bの渡辺英樹さんを襲った「大動脈解離」とは?』や『大動脈瘤・大動脈解離の原因・症状・診断』で解説しています。
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大動脈解離とは
大動脈解離とは、大動脈の壁が内外に裂けて起こる病気です。下図では右上のパターンだといいます。
「裂けてできた空間に血液が流れ込み、膨らんでいき、大動脈の外へ破裂したり枝を壊して他の臓器を傷つけたりします。いのちに関わることがよくある怖い病気です」(米田さん)
大動脈解離には2タイプあり、上行大動脈(大動脈のうち、左心室を出て胸腔内を上方へ向かう部分)で解離した「スタンフォードA型」と下行大動脈(大動脈のうち、大動脈弓から続き、脊椎に沿って下方へ向かう部分)のみで解離するものを「B型」と呼び、それぞれ治療法が異なるといいます。
A型大動脈解離の場合は危機的
米田さんによると、A型は48時間で半数近い方が死亡するという危機的状態だといいます。多くの場合、強い胸痛や背部痛といった症状があるので、ただちに救急車などで病院へ行くことが大切です。CTスキャンで胸を調べれば、診断は容易にできるものだといいます。
A型解離であれば、ただちに手術が必要で、上行大動脈を人工血管で取り替える手術が多いとされますが、解離の範囲や状態によってはさらに広範囲に直すこともあるようです。
「手術死亡率はかつて20-30%を超えていましたが、近年は5%以内に改善しています。ただし、手術前にすでに脳や肝臓その他の大切な臓器に血液があまり流れていないなどの場合は、後遺症が残ったりいのちを落とすことが多々あります。つまりこのタイプの病気は、一刻を争う緊急手術が必要なのです」
B型大動脈解離の場合も緊急入院が必要
B型は通常は手術ではなく、血圧を下げ、大動脈を守り、安定化することが治療の基本だといいます。しかし、大動脈(多くは下行大動脈)が破れる、あるいは枝が壊れて内臓がやられるという状況では、外科手術が必要となることがあり、B型の場合でも緊急入院し、集中治療室できちんと状態を把握し、キメ細かい治療を受けることが大切だと米田氏は説明します。
予防するためにできることはある?
米田氏は大動脈解離の予防について、「まだまだ課題が多くある」としながらも、少なくともやって良いことはいくつかあるとして以下のような例をあげています。
- 血圧の管理
平素から血圧を記録し、これを血圧手帳に記録してかかりつけの医師に見てもらう。これによってより正確な血圧管理ができます。なお、血圧は、起床した直後に測るのが望ましいといいます。 - 禁煙
- コレステロールや中性脂肪などのコントロール
- マルファン症候群や大動脈二尖弁などの結合組織疾患を持つ場合は定期的な診察
CTなどの検査を受けると安心度が高まる
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