豊洲市場移転、2020年東京五輪…どう対処する?
トランプ米大統領就任一色の様相を呈している年明け1ケ月のニュース情勢ですが、国内に目を転じれば、今年指折りの政治的注目ニュースネタとして小池百合子都知事による都政の行方は絶対に外せないものであると思います。
なかなか着地が見えない豊洲市場移転問題に、まだまだ問題噴出の予断を許さない2020東京五輪問題。果たして小池都知事はこれらにどう対処していこうとしているのか、小池都知事のリーダーシップ・マネジメントを読み解いてみたいと思います。
支持率は70%前後 上々な走りだし
昨年7月の都知事選からここまで半年の小池都知事の知事としてのリーダーシップ戦略は、まずまず上手に持ってきていると思います。就任直後の80%超という異常に高かった支持率は年末にかけてやや下降したものの、各メディアの調査ではそれでも70%前後をキープしているようで、走り出しとしては上々な出来であると考えます。
やり口は目の付け所も良く、「機を見るに敏」
小池都知事のやり方は、一言で言えば自身のブランド化を通じたリーダーシップ強化策です。具体的には、ひとつは「都民ファースト」というキャッチフレーズ・ブランディングの活用。これはよくある手法ですが、さらに今ひとつ注目すべき点があります。それは、就任時の高い支持率を背景に対立の構図を有権者の眼前に提示し、「私を取りますか、敵を取りますか」と選択を迫ることで相手との差異を意識させ自己のブランド化をはかるという、いわゆる消費者比較検証型のマーケティング手法を上手に取り入れていることです。
一般的な我が国の商品販売戦略では、明確な比較広告が自主規制も含め実質御法度であるために、他者との具体的比較表示により自己の優位性を表現することはごくごく稀なことです。しかし、政治の世界ではそれができる、という点を巧みに利用。高い支持率の維持に向け、自身のイメージ固定化に利用したことは目のつけ所が良いと言えるでしょう。
さらには、その比較対象の相手を、そもそも自身の出身母体でありながらも、二代続けて不祥事絡みで辞任した都知事を推挙してきたことで有権者の不満がくすぶっていた、都議会与党の自民党都議連にしたという点。これはタブー破りではあるのですが、有権者の不平不満を背景に果敢に挑戦したやり口は、「機を見るに敏である」と言えるでしょう。
安定政権の基盤を確立させた“あの人”と同じ
このやり方を見て、我々は過去に同じような流れに遭遇しているとは思いませんか。そうです、小泉純一郎首相です。小泉首相は、前任の森喜朗首相が小渕恵三首相の急逝を受けて密室で決められた宰相として就任直後から国民の支持率が低く、相次ぐ失言や「えひめ丸事件」における対応のまずさなどから1年足らずで辞任という、その後を受けました。
まさしく国民の政権政党に対する不平不満がたまりにたまっていたそのタイミングで総裁選に出馬した小泉首相は、「自民党をぶっ壊す!」「私の政策を批判する者はすべて抵抗勢力」と熱弁を振るい「小泉旋風」を巻き起こして、国民から圧倒的な支持を得て安定政権の基盤を確立させたのです。そして忘れてならないのは小池都知事が、小泉内閣で初入閣しそのリーダーシップ・マネジメントを間近で見てきていたということです。
新党旗揚、都議選…展開も「小泉劇場」から予想できる?
ではこの先の小池都政はいかにリーダーシップ・マネジメントをしていくのでしょう。小泉内閣を振り返ってみれば、その行方を想定することができそうです。小泉内閣がさらなる国民支持とリーダーシップを確固たるものにしたのは、05年衆議院総選挙でした。郵政選挙と言われたこの選挙では、争点の郵政民営化に反対した議員に「刺客」を立てて徹底的に「抵抗勢力」つぶし、ここでも対立の構図を使って圧勝しました。ちなみに、小池都知事はその時、自ら「刺客」として東京10区にくら替えし見事大差勝利しているのです。
現在、7月の都議選に向けて新党旗揚、独自候補擁立に動いているのはまさしくこの流れを踏襲し、選挙戦を通じて小池都政をより強固なものにしようという狙いに相違ありません。小池都政のリーダーシップ強化のポイントは、確実に7月の都議選にあるでしょう。
注目は選挙の争点に何を置くか
自民党都議連の幹部には「刺客」をぶつけるであろう点も世間的な注目は集めそうですが、やはり注目は選挙の争点に何を置くのか、でしょう。小池都知事がリーダーシップをより強固なものにして豊洲市場移転問題、2020東京五輪問題の抜本的解決がはかれるか否か、山積状態の様々な都政の課題が今後スムーズに運ぶか否かは、単なる選挙の勝敗のみならず、この先夏の都議選の争点をどう作っていくかにかかっていると見ています。