「港区女子」というビジネスキャリア 第1回

港区女子は、なぜここまで嫌われる? 自活する女性から「おごられ」「パパ活」の代名詞になった変遷

SNSをたびたび騒がせる「港区女子」というワード。彼女たちは、悪いイメージを持たれがちだが、従来の港区女子は才色兼備な女性のことを指していたようだ。では、なぜここまで港区女子が嫌われるようになったのか。

港区女子は、なぜ「自活する女性」というイメージではなくなってしまったのか
港区女子は、なぜ「自活する女性」というイメージではなくなってしまったのか

SNS上でたびたび話題に上がる「港区女子」。そもそも港区女子と呼ばれる女性はどのような存在だろうか。

港区女子のイメージはもともと、「自分の力で稼ぐ女性」だった

港区女子とは「ハイステータスな人たちが集まる東京・港区(六本木・麻布など)を活動拠点とし、夜な夜な港区に集う女性たち」のことである。「港区女子」という言葉を最初に広めたのは、ライフスタイル雑誌『東京カレンダー(以下、東カレ)』(東京カレンダー)だ。

東カレは、2017年に港区を舞台とした短編ドラマシリーズ『港区おじさん』を公式YouTubeで配信。ドラマの中で港区女子は、自身の夢をかなえるために港区に集い、港区に住む富裕層の男性=港区おじさんと夜な夜な食事を重ねる。そして最終的には港区おじさんに頼らず、自分の力で稼ぐ女性になっていく様子が描かれている。

つまり、この動画における港区女子のイメージは、港区おじさんの力を借りながらも、最終的に自活する女性として紹介されているのだ。

しかし現在、「港区女子」という言葉だけが独り歩きし、パパ活をしてぜいたくな暮らしをしている女性や、富裕層の男性の愛人のような存在として捉えられることが多くなっている。

SNS上には「『港区女子』って数年前は自身も港区の一流勤めか経営者とかで稼いでいる女性だから、ハイスぺ男とも付き合えてアフタヌーンティーとか優雅にしている人達だと思っていたけど、違った?今はパパ活乞食インスタグラマーのイメージだけど…」といった声もある。

なぜここ数年で大きくイメージが変化したのだろうか。港区女子のイメージダウンには、主に「港区女子VS◯◯」といった、SNS上での炎上が関係している。

おごりおごられ論争、高級すし店の騒動

以下は、港区女子のイメージを大きく下げた騒動である。

料理研究家リュウジVS港区女子

2023年10月、人気料理研究家のリュウジさんがX(旧Twitter)で、友人が連れてきた知らない女性たちとのバーベキューで、女性に全おごりしたことに対して苦言を呈した。

「なんで男ってだけで知らん女子の飯代払わなきゃいけないの?『つかこいつら本当に友達か?』って言ったら『有名人なのにケチすぎ、今の会話録音したからな、拡散してやる』って女子に言われた」と怒り心頭。

続けて「俗に言う港区っぽい飲み会に多いけど」と投稿したことで、リュウジさんとバーベキューをしたのが港区女子だとSNS上で話題になり、港区女子の非常識な態度に対する批判の声が多く寄せられた。

高級すし店VS港区女子

さらに2024年1月、東京・南麻布の高級寿司店を訪れた女性が「大将に殴られかけた」と、店で起きた状況を画像付きでXに投稿した。投稿主の女性はラウンジ嬢で、過去に港区にいる男性への私見を述べる投稿などをしていたことから、「港区女子」といったワードがXでトレンド入り。無許可で大将の写真をさらしたことに関する批判の声が多数上がった

このように、ここ数年のSNSでの炎上によって、港区女子のイメージは大きくダウンした。現在では男性におごってもらったり、貢いでもらったりする存在の「パパ活女子」「ギャラ飲み女子」が港区女子と混同されることもあり、否定的な文脈で使われることが多くなっている。

「成長の機会」にするか、「浪費」するかは港区女子次第

港区というセレブリティの代表格のような街で、自身の若さと美貌を武器に富裕層の男性に依存して生きる存在=港区女子、というイメージに対しては、否定的な印象を持つ人がほとんどだろう。しかし前述したように、港区女子の本来のイメージは、港区で食事会を重ねて男性との人脈を築き、夢をかなえる女性のこと。男性と対等に稼ぐ女性を指していたのだ。

しかしSNSの炎上によって、港区女子というワードに対する世間のイメージは、当初の意味であった「港区で稼ぐ女性」よりも、SNSの炎上で話題に挙がる「富裕層の男性に依存して生きる女性」のイメージが強くなっている。前者の港区女子に憧れていたものの、最終的に後者の港区女子になってしまっていた……というケースも多いのかもしれない。

港区に集う富裕層の男性の中には、経営者や高所得者、つまり成功者が多い。彼らとの出会いをビジネスチャンスだと考えれば、成功の秘訣(ひけつ)を学んだり、人脈を増やしたりすることで、いずれは彼らと肩を並べて対等な立場になれる可能性もある。

港区での活動を、自身の成長の糧にするか、はたまた若さを切り売りして刹那(せつな)的なぜいたくに浪費するかは、港区女子次第なのである。
 
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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