レストアされていないことにも価値がつくクラシックカーの世界

納屋や倉庫、あるいは畑などで長期間にわたり「ほったらかし」「忘れ去られていた」なんてクルマが発見され、再び日の目を見ること。近頃よく耳にする「バーンファインド」とは、こんなニュアンスです。もっとも、クラシックカーマニアにとってはおなじみで、バーンファインド物などと珍重されることもあるようです。



たとえば、岐阜でバーンファインドされたフェラーリ・デイトナなどは近頃の最たる例。なにしろ、同じオークションに出品されたビッカビカのテロッテロな(ノーマル)デイトナに比べ、ほぼ3倍の価格で落札されたのですから。

発見された当時のまま埃まみれで出品されたデイトナはたしかにロウマイレッジ(約3万6000km走行)で、レース用アルミボディ車というレア中のレアだったとしても、この価格差には誰もが驚いたことでしょう。



こうしたヒストリックカー&クラシックカーの世界では「プリザーブド」つまり、過度なレストレーションが施されず、往時のまま時を経てきたクルマほど価値があるとされているのです。バーンファインドカーは重ね続けてきた年輪を大切にし、いくら埃をかぶっていても、いやシート裏からキノコが生えていようとも掃除することなく「このままがいいのだ!」と悦に入る、といったところでしょうか。



さて、バーンファインドの本場はやっぱりアメリカ。全米屈指の個人間売買サイト「Craigslist」で、バーンファインドを検索してみても玉石混交とはいえ、わんさかヒットします。



ただし、これだけの物件のなかから掘り出し物を見つけ出すには、豊富な知識と経験が必要なのは言わずもがな。

 

クルマを見つけ出しても譲り受けるのがまた難しい

しかし、さすがはアメリカ。彼の地にはバーンファインドの専門業者やコレクターが数多く存在しており、なかでもトム・コッター(Tom Cotter)氏はこれまで数百台ものバーンファインドをしてきた第一人者といえるでしょう。現在も保険会社のハガーティ・グループをスポンサーに動画配信しつつ、バーンファインドに関する本も数冊リリースしています。



バーンファインド・ハンターとしてのキャリアは50年を数え、これまで数百台ものお宝を発見。その中にはACコブラ、シェルビーGT500、カニンガムC3といった超大物クラスもぞろぞろいます。こういうお宝がどうして納屋や畑で忘れ去られてしまうのか、実に興味深いものです。

彼の著作「Tom Cotter's Best Barn-Find Collector Car Tales」や、数々のインタビューによると、例えばコブラの場合、「プロザック(抗うつ薬)」を開発した科学者によって所有されていたものの、彼の妻が危険なクルマと考えて運転を禁止、むりやり納屋にしまい込んだのだそうです。



で、コッター氏はどうやって見つけたのかというと、著作にいろいろノウハウが出ているのですが、コブラの場合はプロパンガスの配達員から「あそこの納屋にオースチン・ヒーレーあるぜ」との情報を得て、おっとり刀で出かけてみると「コブラやんけ!」となったのだそう。

コッター氏は、このほかにも郵便配達員、検針員、あるいは保険査定人といった方々からの情報もきわめて重要であると述べています。また、納屋や畑のあるエリアについても競馬場、軍事基地、あるいは自動車工場などがあった近辺は有望だとも。

ただし、コッター氏はバーンファインドできたとしても、クルマをすんなり手に入れることは想像より難しいとも述べています。長期の間に必要書類が紛失していたりすることは日常茶飯事で、時には盗難届の出ている「盗品」であることも! また、元のオーナーがすでに亡くなっているケースも数多く、その場合は遺族との話し合いになるそうですが、ご想像のとおり「ほとんどの場合、説得には恐ろしいほど時間がかかる」のだそうです。



なんだか生臭い話になってきましたが、それでもバーンファインドは夢のある宝探しにほかなりません。岐阜のデイトナに続いて、国内でもどしどしバーンファインドされること心より願うばかりです。

Text:石橋 寛

提供:WEB CARTOP

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