指定場所以外でクラクションを鳴らすことは違法

 クラクションを使えるのは、鳴らすことを指定された場所と、危険回避に必要な場合に限られる。それ以外、たとえば信号が赤から青に変わったのに発進しようとしない前のクルマに対し鳴らすことは、違反に該当する。

 鳴らしてはいけない場面で鳴らした際の罰則は、減点無しで3000円の罰金。逆に、鳴らさなければならない場面で鳴らさなかった場合は、1点の減点と7000円の罰金となる。鳴らさなければならない場面とは、見通しのきかない交差点や曲がり角と、登り坂の頂上付近となる。また、標識で鳴らせと指示されている場所でもクラクションを鳴らさなければならない。
 

では、歩行者との接触など危ない状況では、危険回避に必要な場合となるのではないか。とはいえこの場合は、クラクションの強い音を出すことに運転者のほうが気の引けることもある。軽く鳴らそうとして鳴らなかったり、軽くホーンボタンを押したつもりでも強い音が出て申し訳ない気分になったりすることも多い。大きな音は、注意喚起というより歩行者を驚かせることにもなる。

 ことに、電気自動車(EV)の導入が促された1990年代前半は、現在のような接近通報音の規定がなかったので、低速で走る際に、歩行者へEVの存在をどのように知らせるかがひとつの課題だった。

 

音色に規定のない接近通報音では目の不自由な人には役に立たない

 この課題に対し、米国ゼネラルモーターズ(GM)のインパクト(のちにEV1として発売)と名付けられた試作EVは、通常のクラクションと別に「パフパフ~~」と軽妙な音色のホーンを装備し、これを鳴らしながらハザードランプも点灯するという試行錯誤を行った。その光景は、鳴らされた歩行者も思わず笑みがこぼれるといった具合で、人とクルマの親しい関係を見る思いにさせた。

 この発想を日本でも導入したら、EVが環境によいだけでなく、人ともよい関係を持てるのではないかと思った。ところが、国内にはホーンまたはクラクションをふたつ車載することを禁じる法令がある。その理由は、暴走族が3連ホーンを鳴らしながら走るのを法規によって禁止するためだという。

 しかし、そもそもクラクションは決められた場面か危険を回避する状況以外では使用してはならないのだから、改造違反ではなくその法規で暴走族を取り締まればよい。それよりEV時代を迎えるに際して、人とクルマが仲良く共存でき、安全を守れる軽妙なホーンを通常のクラクションと別に搭載できるようにすることの方が発展性ある解決策ではないのか。
 

 ふたつ目のホーン適用ができないため、接近通報音という、本来は静かに走れるEVの特徴を阻害する対策が決まった。なおかつ、接近通報音に具体的な音色の規定がないため、各自動車メーカーが個別の音を出している。それでは本来の目的であるはずの目の不自由な人にEVの接近を知らせることにつながらない。なぜなら、さまざまな擬音が街に流れれば、それがEVであるのか別の騒音であるのか、目の不自由な人は見て確認することができないからだ。

 日本は多くの場合、根本的原因を解決しようとせず、対処療法での場当たり的な手法で事なきを得ようとする傾向が強い。その結果、自社の接近通報音はいい音色だなどと本末転倒の自慢をする自動車メーカーも現れる始末だ。

Text:御堀直嗣

提供:WEB CARTOP 

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