フロンドミッドシップが理想的なバランス

 運動性能の良し悪しと、車体の前後の重量バランスには切っても切れない関係がある。同じ質量のクルマでも、多くのFF車のように、フロントヘビーなクルマは直進安定性には優れているが、フロントの慣性質量が大きいために向きを変えるのには苦労する。つまり曲がりにくくてアンダーステアの傾向になるということになる。自転車でも、前のカゴにペットボトル飲料やビールなどの酒類を買い込んで満載すると、直進性はよくなるが、交差点などでは曲がりにくさを感じるはずだ。
 

 一方、RRのようにリヤヘビーになるとフロント荷重が小さいので、ステアリングの応答性が悪く、直進性は今ひとつ。自転車でもふたり乗りをすると、フラフラして真っ直ぐ走りづらくなるのがわかるだろう。
 

 以上のような理由から、前後の重量配分はフロントにもリヤにも偏らない、前後50:50が理想といわれるわけだ。しかし、重量配分は50:50なら手放しでOKというものでもない。
 
 

50:50の重量バランスでもスポーツカーのような運動性能が得られるとは限らない

 例えば、軽トラックの荷台の後端に、ドーンと中身の入ったドラム缶でも固定すれば、前後50:50のバランスを作り出すことができるが、トータル車重とエンジンパワーを無視したとしても、こんなクルマがスポーツカーのような運動性能を得られるかというとそんなことはない。

 なぜ同じ50:50の重量バランスでも、軽トラ+ドラム缶仕様の運動性能は低いのか。それはエンジン+人、そしてドラム缶といった重量物が、車体の末端に固まっているため。旋回するもの=回転するものというのは、その中心軸から離れた部分が重ければ重いほど回転速度の時間変化が小さくなり、回転速度を上げられない。

 つまりヨーの発生・収束により大きな力が必要になるということ。いわゆる慣性モーメントが大きいため曲がりにくいし、曲がり出すと今度は止まりにくくなるので、クルマの場合はアンダーステアもオーバーステアも強い、最悪のクルマになってしまう……。

 慣性モーメントは、簡単にいえば「中心からの距離×出っ張りの重さ」で決まる。より詳しくいうと、Z軸まわりの慣性モーメントは、出っ張りの質量×車体中心からの距離の二乗に比例する。両手を上に伸ばして身体を左右に(Z軸を中心に)一回転させるのと、両手を左右に伸ばして身体を一回転させるのとでは、回転運動に対する抵抗力が大きく違うのがわかると思う。「小さな力でヨーを出して、小さな力でヨーを収束させる」=運動性能を高めるためには、慣性モーメントを小さくすることが欠かせない。
 

 そのためには、重たいものをなるべく車体中央に集め、前端・後端は1グラムでも軽くすることが重要となる。それは距離の二乗に比例するからだ。

 というわけで、前後50:50の重量配分が理想というのは、フロントエンジンのクルマで、なおかつ重量物が中心に集まっていて(フロントミッドシップ)、オーバーハングが短い末端が軽いクルマに限られた話だと思った方がいい。
 

 重量バランスについて、本当の意味でいえばやはり理想はミッドシップだ。ミッドシップだと静止時の前後重量バランスは、大体40:60ぐらいになる。これが走行中、フルブレーキを踏むとちょうど前後50:50ぐらいになり、4本のタイヤを最大限使って減速できる。最近のクルマはタイヤとブレーキの性能がどんどんよくなっているので、重量物は中心よりやや後ろにあるのが望ましい。
 

 その上でエンジン、ミッション、ドライバー、燃料タンクなど重たいものはZ軸周辺に集まっているので、慣性モーメントは少なく、小さなきっかけでヨーが出てても収束もさせやすい。しかもリヤがやや重いことでトラクションも十分かかるのでメリットしかない。

 よく止まって、よく曲がって、よくトラクションがかかるのは、少しだけリヤヘビーのミッドシップ。さらに、エンジンなどの重心が低いことも、重量バランスの優れたクルマの条件となる。


Text:藤田竜太
提供:Auto Messe Web

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