アラサーが考える恋愛とお金 第2回

夫は契約社員、私も派遣社員。「子どもが欲しい」は“贅沢”なの?【アラサーが考える“恋愛とお金”】

東京大学大学院が発表した研究結果によると、子どもを持たない人の割合は過去約30年で3倍近くに。アラサー世代の女性の中にも、出産を望む人がいる一方で、出産を望まず仕事や夫との時間を優先したいと考える人も増えている。そんな、出産とお金の関係性とは?


デートや婚活、結婚式……恋愛や結婚にはお金がかかる。特に現代社会においては、働き方や生き方の多様化が進み、恋愛とお金に対する価値観も変容している。本連載では、これからの「恋愛とお金」について、アラサーの恋愛ライター・毒島サチコが取材をもとに考察。第2回は「出産したい現代女性の本音」について紹介する(第1回はこちら)。
 

出産のために、キャリアプランを立てるアラサー女性たち

「結婚は27歳まで、子どもは30歳と決めてキャリアプランを立てました」
 
そう語るのは、真知子さん(30歳/広告代理店)だ。彼女は、大学入学を機に九州から上京し、27歳で大学の同級生と結婚。現在は大手広告代理店に勤務しており、8月から産休に入るという。
 
「結婚と出産をすることを見据えて、25歳の時にベンチャー企業から育休制度が整っている大手企業に転職しました。その後、今の旦那と結婚。仕事が落ち着いたタイミングで、計画的に妊活をして、現在産休中です」。淡々と語る彼女は、自分の人生を“計画的”に設計しているようだ。
 
真知子さんのように、出産を見据えて、キャリアを計画的に設計しているアラサー女性は多い。夏子さん(33歳/フリーランス)もその1人だ。
 

月の治療費=40万円超えも。ゴールの見えない不妊治療

「27歳の時、祖父が死去をきっかけに、『子どもが欲しい』と思うようになり、子育てがしやすそうな在宅可の仕事に転職しました。『いつできても大丈夫』と準備万端で子作りに挑んだのですが……」
 
その後、なかなか子どもを授からなかった夏子さんは、産婦人科で不妊症であることを告げられた。
 
「不妊治療には高い費用もかかるので、在宅可であるとはいえ、通院と仕事の両立は大変でした。出産に至るまで5つのクリニックに通い、月の治療費は40万円を超えることも。不妊治療はゴールが見えない上にとてもお金がかかるんです」
 
夏子さんは2021年末、6年間の不妊治療を経て、念願の第1子を授かった。高額な治療費に「貯金と仕事がなければ、子どもを諦めていたかもしれない」と語る。

上記に紹介した2人のように、キャリアプランを立てた上で、子育てをするアラサー世代は多い。一方で、こんな意見もある。
 

夫も契約社員だし、私も派遣社員。生活する分には困らないけれど……

「子どもが欲しいとは思いません。お金がかかるし、2人の時間を大切にしたいので」

沙月さん(29歳/映像制作)は、高校卒業を機に上京し、現在CMの制作会社で派遣社員として働きながら、結婚して2年になる夫と都内に住んでいる。

「子どもを大学卒業まで育てるなら、最低1000万はいるって書いてある記事を読んだことがあります。今は私も夫も収入はあるし、2人で生活する分には困らないけど、そこに子どもが増えたら……。夫も契約社員だし、私も派遣社員として働いているので、いつ仕事がなくなるか分からない。育休も制度としてあるけど取りづらいし、お互いの両親も地方に住んでいるので、子育てにするなら私は仕事を辞めなきゃいけないのかな……とかいろいろ考えたら、子どもを産む余裕なんてないんです」
 

子どもを持たない人の割合は約30年で3倍に

沙月さんのように、子どもを持たない人は増え続けているようだ。

4月28日、東京大学大学院が発表した「我が国における子供の数と学歴・収入の関係 全国調査から明らかになる少子化の実態」という研究の中で、子どもを持たない人の数は、男女とも過去30年の間に3倍近くに増え、男性では4割、女性では3割近くに上ることが分かった。(男性は 14.3% から 39.9%、女性は 11.6%から 27.6%)。また「男性は、高収入・高学歴の人ほど子どもの数も多い」という結論が出ている。(男女ともに1943~1948年の間と、1971~1975年の間に生まれた人の比較)
 
一方で興味深かったのは、女性の結果だ。
 
従来の研究では、日本の女性は学歴(さらにはそこから想定される年収)が高いほど、子どもがいない割合が高いとされていた。この結果から、女性が出産後に仕事を継続することが難しく、バリバリ働いている女性ほど子どもを諦めている可能性が示唆されている。
 
しかし今回の研究で、現代の高学歴女性(大卒)とそれ以外の女性で、子どものいる割合に差異は見られなかった。すでに日本よりも出産後も就労を継続できる環境が整っている欧州では、高学歴・高収入の女性の方が、子どもを持つ割合が高くなっている。
 

お金がないと子どもは産めない?

今回の取材を通じて、日本も女性が働きながら育児できる制度が整いつつあるが、雇用の不安定化などにより、子どもを持つことができないアラサー夫婦が増えている現実が浮き彫りになった。

「共働きでないと子どもを育てられない」という意見があるのも事実だ。

出産にはタイムリミットがある。いずれ結婚・出産したいと考える現代女性に必要なのは、子育てから逆算してキャリアプランを立て、経済的に自立していることかもしれない。


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