たかがゴムだが奥深い! エンジンマウントの役目とチューニングの効果とは

長いスパンでの消耗品であるゴム類。サスペンションのアーム類に打ち込まれていたり、ストラットの上部もラバーマウントになっている。エンジン本体もボディ骨格に直接固定されているのではなく、ゴムのマウントを介している。エンジンマウントの役割とは。

エンジンとボディをつなぐゴム製パーツ「エンジンマウント」

 長いスパンでの消耗品のひとつにゴム類がある。サスペンションのアーム類に打ち込まれていたり、ストラットの上部もラバーマウントになっている。またエンジン本体もボディ骨格に直接固定されているのではなく、ゴムのマウントを介している。今回はエンジンマウントの役割などを見ていこう。
 
 

走りにこだわるなら定期的に交換すべき

 パーツとしては金属の骨格と結構大きなゴムの塊の組み合わせになっていて、ボルトが通るように穴が空いていたりする。FFの場合、エンジンとミッションが合体したものを左右から釣りつつ、後方下方にも設置することが多い。この場合は前後にエンジンがずれないようにするトルクロットタイプだったりもするが、いずれにしてもこれだけで固定している。

 そうなると、劣化は避けようもなく、だいたい10万kmぐらいで交換したほうがいい。ゴムが砕けてエンジンがずれてしまうようなら即交換だが、使おうと思えばもっと使うことはできる。ただアイドリング時や加減速時に振動が大きくなったり、場合によってはよじれたりする際に音が出ることもあるので、走りにこだわるなら定期的に交換したほうがいい。
 
 

純正のほかに「強化マウント」という選択肢もあり

 純正で供給されていれば単純にそれに交換すればいい。ただ気になるのは「強化マウント」というもの。車種ごとに設定されているので、交換自体は純正でも強化でも同じで置き換えるだけだ。そうなると気になるのは効果で、強化とつくだけになにやら良さそうな気がしてくるのもまた事実だ。

 ただ実際のところは単純な話ではない。硬さはいろいろと設定があったりするものの、純正よりも明らかに硬いのには変わりがなくて、爪を立ててみても押しきれない感じ。純正は触ってみるとわかるが、あくまでも一般的なゴムだ。

 

強化マウントはダイレクト感UP、乗り心地DOWN

 これを付けるとどうなるかというと、まずは振動が大きくなって正直不快と感じる人もいるほど。ではなぜ強化マウントが存在し、装着されるのかというと、エンジンやミッションがぶれないないので、走りがダイレクトになるから。細かく見ると、アクセルを踏むとエンジンの回転が上がるが、その際に少しだけではあるがエンジンは回転方向によじれるように動いてしまう。エンジンブレーキをかけたときも同様になるのを強化マウントであればガッチリと固定するので防止できるというわけだ。また、マニュアル車であればクラッチ操作やシフト操作の際にわずかに動くことで操作に甘さが出てしまうが、こちらもカチッしたものになるというメリットがある。

 ただこれらはモータースポーツや走行会向けのチューニングで、ストリートでは不快なレベルだったりする。どうしてもという場合はゴムの硬度が明記されているパーツが多いので、そこを参考にしてベストなものを選ぶといいだろう。また、純正パーツが製造廃止になってしまった旧車の場合、社外で強化タイプがあれば救世主的な存在ではある。たとえ硬くて少々不快でも、新品がないよりはましだ。
 
 

じつは樹脂を使ってのDIYも可能

 このエンジンマウント、じつはDIYがそれほど難しくないパーツだったりもする。方法としてはヘタった純正のゴムを取り除いて、そこにエポキシやシリコンなどの樹脂を流し込んで固めるだけ。ネットでは少々お高いが、専用のキットもあるので樹脂入手に自信がない人にはおすすめだ。ちなみにサスペンションブッシュも同様の手法が使える。

 今まで試した感じでは、純正同等に柔らかめにするのはかなり難しく、硬い強化タイプではあればとにかく樹脂を流し込んでみるという荒業的な感じでDIYできるので、簡単ではある。もちろん専用の自作キットであれば、硬度が書いてあるのでそれで判断すればいいだろう。ヘタって交換した使用済みで試してみるのが一番リスクが少ないので、興味ある方は試してみるのはいかがだろうか?
 

TEXT:近藤暁史
提供:Auto Messe Web

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