国産乗用車で最大の排気量6.4リッター! 車重は3トン超え! たった7台だけの日産プリンスロイヤルという激レア車の中身

国産乗用車で最大排気量を誇るクルマをご存じだろうか? 1967年に発売された日産ロイヤルだ。6373ccという排気量は、50年以上経ったいまでも超える日本車は誕生していない。わずか7台のみが生産されたという日産プリンスロイヤルとはどんなクルマなのか?

6リッター超のV8を搭載した高貴な日本車が存在した

 国産乗用車において最大排気量エンジンを積んだモデルをご存知だろうか。

 先代のトヨタ・センチュリーが積んだ国産唯一のV12エンジン「1GZ-FE」の総排気量は4996ccだったし、最新のレクサスが積むV8エンジン「2UR」系の総排気量は4968ccだ。ひと世代前のレクサスLXには5662ccのV8エンジン「3UR-FE」が積まれていた……。パッと思い浮かぶのは、このあたりだろうが、国産乗用車史上最大排気量のエンジンを積んだモデルは1966年に発表されたモデルだった。
 

 それが「日産プリンスロイヤル」だ。

 プリンス(王子/皇太子)とロイヤル(王室の、皇族の)という、高貴な名前を持つ、このモデルはまさしく天皇陛下が乗るための「御料車」として作られた特別な国産車だった。
 

 海外では王室、日本では天皇家が乗るような特別なクルマは、その国における最高峰と位置づけられている。モータリゼーションが生まれた国であり、王室も存在するイギリスにはロールスロイスという、そうしたクルマを作る専業ブランドがあり、自動車を生み出した国とされるドイツにもメルセデス・ベンツが存在している。ロイヤルファミリーとは無縁だが、アメリカにはキャデラックというプレミアムブランドがある。

 じつは戦後の日本でも天皇家の御料車には、こうした輸入車が選ばれていた。しかし、高度成長期に入り、自動車メーカーが力をつけていくなかで、「自動車の最高峰である御料車を国産車にする」という機運が高まる。これは単独メーカーでの思いではなくオールジャパン的な動きだった。その中で開発の中心となったのが、プリンス自動車だった。ご存じのようにスカイラインやグロリアを生み出したメーカーだ。

 とにかく国産の御料車にこだわり、その部品のすべてを国産にするという意気込みだったというが、最終的にトランスミッションだけは対応できず、GM製の3速ATが採用されたが、それ以外はほぼ国産品でまかなわれた。それは総排気量6373ccという国産史上最大排気量のV8エンジンも同様だった。
 


 

7台が生産されそのうちの1台が昭和天皇記念館に展示中

 そんな国産御料車の開発を担当していたプリンス自動車は、御料車を発表せず1966年8月に日産自動車と合併することになる。そして、1966年10月に国産御料車として「日産プリンスロイヤル」が発表され、翌1967年から生産がはじまった。
 


 車両型式S390P-1型、プリンスロイヤルのボディはエンジン同様に桁外れのスケールで、全長6155mm・全幅2100mm・全高1770mm、ホイールベースは3880mm、車両重量は3200kgとなっていた。基本設計は当時の常識的なものである箱型断面のラダーフレームで、巨大なボディはフレームに載せられた構造となっている。当然ながら駆動方式はFRだ。
 

 これだけ大きなボディは後席の快適性を実現するためであり、重量増は防弾ガラスなど安全性を確保するため。また、冗長性を確保するために、ブレーキと燃料系はそれぞれ二重系統式とされていた。なお、補助席を含めた乗車定員は8名になっていたという。

 プリンスロイヤルは、合計7台が生産され、宮内庁には5台が納入されたと言われている。まさに御料車のためだけに生み出されたクルマであり、このエンジンがほかに使われなかったのは残念に感じる部分もあるが、天皇陛下のために開発したエンジンを他車に流用するなどという商品企画は礼を失した行為であり、微塵も考えられなかったのだろう。
 

 1967年から2007年まで御料車として活躍したというプリンスロイヤルは、はたして現存しているのか。そもそも中古車として流通するということもありえないので、一般人が持っているはずはない。製造元である日産は所蔵しているという話だが、座間の日産ヘリテージコレクションでは公開していないようだ。

 もはや一般人が見ることができない幻の史上最大排気量の国産乗用車……と思いきや、意外にも東京都立川市にある国営昭和記念公園内、昭和天皇記念館にプリンスロイヤルが展示されているのだった。

 国産初の御料車という強い思いで生み出されたプリンスロイヤルは、クルマ好きであれば、一度は本物を目にしておきたいモデルであることは間違いない。昭和記念公園には有料駐車場も用意されているので、ドライブがてら訪れてみてはいかがだろうか。

Text:山本晋也

提供:WEB CARTOP

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