いかにも都会派な小型SUV! じつは初代RAV4は「隠れ」ガチ4WD車だった

初代「トヨタRAV4」の発売は1994年。若者のライフスタイルに向けた、アクティブ、スポーティ、コンパクトなどのキーワードで作られた、いまで言う「クロスオーバーSUV」の先駆けだ。コンパクトなスタイルが印象的だが、4WDの走行性能も筋金入りだった。

アーバンでカジュアルでパーソナルなSUVの新ジャンルを開拓

 初代「トヨタRAV4」の発売は、1994年(平成6年・戌年)5月のことだった。人でいえば28歳のオトナ、とはいってもまだ20代かぁ、意外と若いなぁ……とも思えなくもない。RAV4よりずっとオトナの年代にとっては28年前など「ついこの間」の気もするのだが、登場時の広報資料をひも解くと、「若者のライフスタイルが多様化するなかで、そのニーズに対応できるクルマとは、というところから企画はスタートした」とある。そしてアクティブ、スポーティ、コンパクト、お洒落心&遊び心、バリュー・フォー・マネーをキーワードに掲げて開発が進められた、とも。
 
 

トヨタが若者に向けて生み出したエントリーモデル

 こう文字だけで聞かされると「ふーん」といった感じだが、未来有望な「若者」にフォーカスしていたところが、さすがトヨタだったというべきか。つまり、「センチュリー」とは言わないまでも、ゆくゆくは生涯を通じてトヨタ車のラインアップをお楽しみいただく、そのエントリーモデルにしてくださいね……ということだったのだろう。

 ちなみにコンセプトカーが最初に登場したのは1989年の東京モーターショーでのこと。「RAV-FOUR」の名で披露されたこのモデルは、「ネオアーバン4WD」を謳い、コンパクトな提案型のクルマだったものの、ショーカー然としていて市販車よりもオフローダー色が強かった。その後少し時間が空き、1993年の東京モーターショーを経て、翌94年3月のジュネーブショーで市販化を発表、同年5月に日本国内での発表・発売に至った。
 
 

スターレットGTより短かった超コンパクトボディ

 初代RAV4の魅力は、何といってもそのコンパクトな身なりにあった。全長が当時の「スターレットGT」より110mm、「カローラII」と較べるとじつに235mmも短かったといえば、その小振りさがおわかりいただけるだろう。

 そしてあのスタイリングだったのである。当時、筆者は新車の発売のタイミングにあわせて発刊される「GOLD CARトップ・ニューカー速報」の取材に立ち会い、発売直前の実車に東富士のトヨタのテストコースで初めて対面した。この本は性格上、「まずそのクルマのいいところに触れる」ことが主眼だったから行間に沈めることにしたのだが、「観光地の湖にホノボノと浮かぶスワン型のボートみたいだ」が、たしか個人的な第一印象だったことを、28年の時を経てここに吐露しておこう(大袈裟か?)。優しいといえばそうだが、果たして、このある種ミュータントのような4WDが通用するのかどうか……と。

 

よく動く足でオフロード車としても優秀だった

 だが取材当日、高速周回路や特別に設定されたオフロードコースで試乗して、舌を巻いた。身軽にどこでも安心・快適に走れるクルマだったことが、一瞬でわかったからだった。ホイールベースは2200mmと奇しくも当時の「スズキ・エスクード」、「ラーダ・ニーヴァ」と同一だったようだが、全幅は1695mmとこの3車中もっともワイドで、そのことが高速走行時の安定感、快適性に寄与していた。
 

 併せて驚かされたのがオフロード性能の高さだった。そのときの試乗コースは、クルマの目の前を突然キジが横切るような、ほぼ自然そのままの場所。しかし初代RAV4はギャップをモノともせず、ボディをミシリとも言わせずに走りきったのだった。歩くような速度でも自在なアクセルワークが可能なことはオフロード車の命だが、それもOK。軽快で、想像以上にサスペンションをストロークさせながらのオフロードの走りを披露して見せたのだった。

 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リヤは新開発だったトレーリングアーム付きのダブルウイッシュボーンとした4輪独立、最低地上高は205mmを確保していた。それとエンジンは、最近の感覚からすれば意外だが、2L(3S-FE型)の余裕ある排気量が選ばれていた。
 
 

世界累計販売台数1000万台を超える金看板に

 なお当初のRAV4は、販売店ごとに正確にいうと、「RAV4 L」と「RAV4 J」の2車が用意されたが、ラインアップ、バリエーションは共通だった。さらに当初のCMにはキムタク(木村拓也)が起用されていたようだったが、彼について疎い(興味が薄い)筆者は、そのことの記憶はほとんどない。

 また初代登場の11カ月後、1995年4月になると、ロングホイールベース/5ドア版の「RAV4 V(ファイブ)」が設定された。ホイールベースを3ドアに対し210mm伸ばした2410mmとし、5名乗車を可能にしたゆとりのある後席と409~645Lのラゲッジスペースをもち、より幅広い用途にかなうモデルとして設定。こちらも手堅い完成度から、当初からの3ドア以上の人気を集めた。なおこの時代のSUVなのでまだスペアタイヤはバックドアにキャリアで背負う形で、バックドアは向かって右側にヒンジがあり左側のハンドルを引いて操作する横開きを採用していた。

 RAV4はその後も2代目(2000年)、3代目(2005年)が日本市場に投入された。けれどRAV4といったら、やはり初代の姿が真っ先に思い浮かぶ。アーバンでカジュアルでパーソナルなSUVの新ジャンルを開拓したモデルだった。
 

TEXT:島崎七生人
提供:Auto Messe Web

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