やっぱりホンモノは違う! 見た目は都会派でも「なんちゃって」じゃない4WD性能を誇るSUV5選

悪路などで力強い味方となってくれる4WD。しかし、あくまでも補助的な簡易システムとなっている車種も多い。そこで、ガチガチなシステムまでは必要ないけど安心したいという人にオススメなモデルを紹介しよう。

4WDと言っても補助的な性能しかないものもある

 4WDでアウトドアを楽しみ、悪路や雪道を安心して走ってみたい……そんな、4WD、SUV初心者のクルマ選びで陥りやすいのが、4WDへの過信だ。4WDと名のつくクルマなら、どんなところでも走り抜けられる、とはいかないのである。

 

SUV風仕立ては最低地上高にも注意

 一見、クロスオーバースタイルのクルマで4WDを選択しても、じつは生活ヨンク的=ライト4WDだったりする。しかも、悪路を走る上で重要な最低地上高が2WDと変わらない、なんてこともあるのだ。例えば、スズキ・スペーシアギア、三菱eKクロスの最低地上高はそれぞれ150/155mmで、標準型スペーシア、eKワゴンとまったく同じ。クロスオーバーモデル風の4WDだからと言って、走破性にかかわる最低地上高が一般的な乗用車と変わらないこともある。


 もちろん、2WDより安心感はあるが、悪路をガンガン走るような4WDシステムではなかったりする。とはいえ、街乗りメインで雪などめったに降らない地域で使うには、それでも十分だろう。オンロードでの安心感、安定感も得られるからである。もっとも、悪路や雪道走行前提なら最低地上高は200mm前後欲しいところだ。

 

1台で複数の4WDシステムが用意されているモデルも存在

 つぎに、同じ車種でも複数の4WDシステムが用意されているクルマがあり、4WDとしての機能、走破性に差があることもある。その好例がトヨタRAV4。全車、最低地上高は悪路の走破性にバッチリな200mmが確保されているのだが、4WDシステムは複数あり、アドベンチャーグレードとG“Z package”には「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を採用。これはガソリン車用のシステムで、後輪左右のトルクを別々に制御するトルクベクタリングコントロールと、4WD不要の場面で後輪への動力伝達を切断し、燃費を向上させるディスコネクト機構を備えた世界初のシステムだ。


 そして、上記グレード以外のガソリン車用の「ダイナミックトルクコントロール4WD」、およびHVモデル用の電気式4WD=E-Fourの3種類がある。オン/オフの両方でもっとも4WDの威力があるのは機械式の「ダイナミックトルクベクタリングコントロール4WD」。次に「ダイナミックトルクコントロール4WD」となり、E-Fourは前後輪が機械的に直結しない後輪独立の電気式4WDとなるため、雪道などで安心なのはもちろんなのだが、極悪路の走破性ではガソリン車の4WDには敵わない。

 RAV4の場合、ガソリン車の本格クロカン的な走破性をとるか、HVの燃費性能、アウトドアでも活躍するAC100V/1500Wコンセント(HVモデルに4万4000円のオプション)の利便性をとるかで悩むことになる。もっとも、日本のアウトドアフィールド、キャンプ場、雪国でも観光地へのアクセスに使われる除雪された道では、ヘビーな4WDまで必要ないことがほとんどだから、2WDに対するE-Fourの優位性はあると考えていい。


 同様のことは、トヨタならヤリスクロスも同じ。ガソリン車は意外なほどの走破性を備える機械式4WDであり、HVモデルはRAV4同様にE-Fourとなるわけだ。

 

オススメの4WD搭載車を紹介!

 では、ランクルやジムニーのような超本格な走破性を備えたSUVまでは必要ないけれど、悪路や雪道で、いざというときに大活躍してくれる4WDシステムを搭載。街乗りからアウトドアライフにまで薦められる、後席も快適で、荷物もたっぷり積めるオールマイティな4WD車はどれか?

 上記のトヨタRAV4やヤリスクロスのガソリン車。そのほかには、ビッグマイナーチェンジを行ったばかりのマツダCX-5へ新たに加わった、アウトドアテイストを散りばめ、走破性に特化したオフロードモードを備えているフィールドジャーニーグレード(4WDの制御はマイチェン後150km/hまで対応)がある。


 そしてHVのe:HEVモデルでもホンダ独創のセンタータンクレイアウトの恩恵で、後輪にプロペラシャフトを介して大トルクをダイレクトにつなぐ構造を新採用。結果、AWD性能が格段にアップ(4WDの制御は140km/hまで対応)したホンダ・ヴェゼルといった車種が、ミドルサイズSUVの実力派4WDとしてお薦めだ。


 実際、RAV4、CX-5フィールドジャーニー、ヴェゼルの4WDは、ともにオフロード特設コースなどで極悪路やモーグル、滑りやすい路面などをグイグイ走破した経験があり、走破性の実力の高さを確認済みである。


 とはいえ、そうしたSUVは全高の高さから、都市部に住み、集合住宅の駐車スペース、よく使う駐車場が立体駐車場(全高制限1550mm以下とか)という場合は、選択することはなかなか難しい。ちなみに筆者の知り合いが住む東京湾岸の高層マンションでは、ハイルーフ用の立体駐車場の申し込みが140台待ちとか(!?)で、SUV購入を諦めたそうだ。

 

立体駐車場にも入る欲張りなモデルは?

 でも悪路や雪道にめっぽう強く、立体駐車場に入れる全高1550mm以下のクルマがある。それはスバルVX。ただし、1550mmの全高はルーフアンテナを倒した状態、ルーフレール非装着車、マイルドHVのアドバンスグレード以外という条件にはなってしまう。だが、扱いやすいサイズで都会にも似合う一方、走破性はスバル自慢のシンメトルカルAWD+本格SUVのフォレスターにも採用されるXモードを装備する。


 これは、路面状況に応じてふたつのモードを選択するだけで、4輪の駆動力やブレーキなどを適切にコントロール。おもに悪路からのスムースな脱出を実現してくれる機能だ。さらに、下り坂などでつねに一定車速を維持するヒルディセントコントロールも完備。スタイリッシュな見た目とは裏腹に、強力な走破性能を持っている。そう、スバルXVは都会から雪国まで、オールマイティに使いやすい4WD車と言っていい。

 都会に住み(駐車場が立体、あるいは背の高いクルマが苦手なケース含む)、帰省やウインタースポーツで雪国に向かう機会も少なくないというなら、まさにジャストな選択となるはずだ。


 ちなみに、4輪の駆動力やブレーキなどを自在にコントロールする4WD機能で有名なのが三菱のS-AWCだが、新型アウトランダーPHEVのそれは、スバルのXモードのように脱出性に特化したものとは違い、オン/オフを問わない走りのダイナミクス、曲がりやすさに照準を当てたメカニズムとなる。そうした個性、考え方がメーカーごとに異なるのもまた面白いところ。


 スポーティでダイナミックな走りと走破性の高さ、そして先進性、3列シートによる多人数乗車性、AC100V/1500Wコンセントの装備などのすべてをわが物にできる、ランエボとパジェロの血を受け継ぐ新型アウトランダーPHEVは、災害大国日本において最強のSUV、4WDであると断言できる(日本カー・オブ・ザ・イヤーの2021-2022テクノロジー・カー・オブ・ザイヤー受賞車でもある)。


 いずれにしても、四季のある日本では、雪国に住んでいる人以外でも4WDのありがたみを感じるシーンが少なくなく、とくにアウトドアを楽しむ人にとっては、保険の意味でも走破性に優れた4WDを選んでおくといい。

 

昔に比べ4WDのデメリットは少なくなっている

 最後に重要な話を。かつて、2WDと4WDの両方を揃えるクルマに乗ってみると、2WDのほうが静かで乗り心地が良かった時代があった。しかし今では静粛性に大きな違いはなく(オールシーズンタイヤ装着車は不利だが)、それどころか2WDより4WDのほうが乗り心地面で優位なケースも多いのだ。

 もし、SUVの2WDと4WDで悩んでいるようなら、あるいは4WDはうるさく乗り心地が悪いという過去の先入観にとらわれたままなら、ぜひ購入希望車の2WDと4WDを乗り比べてほしい。4WDシステムの重量増による、よりしっとり上質な乗り心地に感動できるかもしれない。それはSUVだけでなく、スズキ・ハスラーやダイハツ・タフトといった軽自動車のクロスオーバーモデル、コンパクトカーの日産ノートシリーズ(オーテッククロスオーバーを含む)でさえそうなのだから、4WDを選ぶメリットは、2WDに対する燃費性能を除けば、それはもう計り知れないのである。


 と、悪路や雪道走行にも適した4WD車を紹介してきたが、悪路や雪道で絶対安心・安全というわけではない。走行環境に適応した運転、状況判断、雪道の場合、路面状況によってはスタッドレスタイヤ(加えてチェーン規制時のチェーン装着)の併用も不可欠だ。最低地上高に余裕ある4WDだからといって”絶対”はない。乗っているクルマの4WD性能を見極めるとともに、あくまで“過信は禁物”、と言っておきたい。

TEXT:青山尚暉
提供:Auto Messe Web

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