【試乗】CX-5は都会派SUVかと思ったら泥系グレードもいい! マイナー感ある2リッターNAエンジンもアリだった

マツダのSUV「CX-5」現行型は2021年12月にビッグマイナーチェンジを敢行。新グレード「フィールドジャーニー」のガソリン2L NA 4WD仕様に試乗して、新設定「Miドライブ」&「GVCスポーツモード」の追加、シャシー、足回りがどれほど進化したのかレポート。

CX-5ビッグマイチェンで統合制御技術「Miドライブ」が新搭載

 マツダ車のSUV商品群のなかでもっとも売れているのが「CX-5」だ。現行型は2017年にデビューし、すでに5年を経過しているが、2021年12月にビッグマイナーチェンジを敢行。これまでの一部改良とは違う、大幅な改良が行われたのだ。

 その内容はエクステリアデザイン、新グレードの追加から、「Miドライブ」&「GVCスポーツモード」の追加(一部グレード)、シャシー、足まわり、それに伴う乗り心地、そしてフロントシートにまで及んでいる。

 

アウトドア志向の特別仕様車「フィールドジャーニー」

 ところで、CX-5はまさに都会に似合うクロスオーバーSUV。深みのある美しさが際立つ「ソウルレッドクリスタルメタリック」のボディカラーに至っては、泥臭さなど皆無の洗練された佇まいを演出し、それはそれでCX-5の大きな魅力となっていた。だが、クロスオーバーSUVのユーザーのなかには、もっとアクティブな雰囲気ある、アウトドアに似合うSUVを望んでいた人も、このアウトドアブームの最中、少なくなかったはずだ。

 そこでマツダがCX-5に満を持して投入したのが、アクティブ仕様の「Field Journey」(以下、フィールドジャーニー)である。先進的アウトドア層に向けて、アウトドア・アクティブ価値を持ったSUV拡販モデルと位置付けたモデルであり、CX-5の洗練さはそのままに力強く、遊び心を表現。もちろん、マツダ車ならではの人馬一体感あるSUVらしくない走る楽しさや走破性を備えたAWDに、荷室の汚れも気にせず遊べ、きっちり積み込める荷室を持つSUVとなる。
 


 ほかのCX-5との違いは、エクステリアでは新色の「ジルコンサンドメタリック」のボディカラーを用意し、バンパーロア・ボディサイドにアンダーガード風表現を織り込んでいる。17/19インチのホイールはダークメタル色、タイヤはオールシーズンタイヤとし、アウトドア志向を強調。六角形のエンボス加工が施されたハーフレザレットシートには、ライムグリーン(黄色っぽい)の差し色でこのグレード独自の表現としている。
 


 注目すべきはラゲッジルームの仕立てで、リバーシブルラゲッジボードによる耐水仕様のフロア&サブトランク(55Lの大容量床下収納)が備わっていることだ。これならSURF & SNOWのスポーツシーン、アウトドアでの濡れもの、汚れものの収納も気を使わずに済む。フロアボードは上下2段、前後2分割にセットできるため、後席格納アレンジを含め、あらゆるシーンでの使い勝手は自由自在である。
 


 また、今回のビッグマイナーチェンジでは「マツダインテリジェントドライブセレクト」=「Miドライブ」を新設定した。フィールドジャーニーの場合、従来のドライブセレクションにおける「ノーマル」、「スポーツ」に加え、新たに「オフロード」モードを設定。GVCオフロードモード、およびこれまで低速域のみだったAWD制御を150km/hまでの中高速域に拡大したこともあって、オンロードだけでなく、オフロードでも人馬一体の走る歓びを実現しているという。
 ちなみに他車のオフロードモードはロックやダートなど、複数のモードがあるケースが多いのだが、ユーザーが今、どのモードに入れるべきか悩むシーンを想定し、あえてわかりやすいオフロードモードのみにしたのだそうだ。
 
 

 

アウトドア用の純正アクセサリーも多数ラインナップ

 ここでは、新グレードとして追加された「CX-5 20Sフィールドジャーニー(4WD)」の試乗レポートをお届けしたい。まず、簡単にスペックを紹介すると、パワーユニットは2L NA、156ps、199N・m+6速AT。車重1600kg(スマートエディションと同じでFFの60kg増し)。WLTCモード燃費14.0km/L。最低地上高はCX-5の全グレード共通の210mmとなる。

 なお、サスペンションはこのフィールドジャーニーだけダンパーのセッティングが異なり、アウトドア、オフロードに相応しいゆったりとした乗り味に仕上げられている。標準装備されるタイヤはオールシーズンだが、純正オプションでオールテレインタイヤも選択可能となっている。
 


 また、純正アクセサリーのなかにはアクティブアイテムも多数用意され、車中泊も可能になるベッドクッション、シェードをはじめ、ルーフキャリア、サイドタープなども揃っているから、新車時から即、アウトドア、オフロードに向かうことができるだろう。さらにキズに強いマットな質感を持つ素材のアンダーガーニッシュセットまでラインアップされているから、ドレスアップの楽しみもまた、フィールドジャーニーならではと言っていい。
 

 

2L NAエンジンの4WDでも力感に不足なし!

 ところで、CX-5 20Sフィールドジャーニー 4WDを走らす前に、ちょっとした心配事があった。それは、2L NAエンジン+4WDとなれば、これまでの各パワーユニット(ディーゼルターボ、2.5L NA、現在はない2.5Lターボを含む)、駆動方式の試乗経験から、CX-5のなかではもっとも非力な仕様であるという印象であり、なおかつ車内には撮影スタッフ2名も同乗。そのうちのひとりは体重100kgの巨漢。それにカメラ機材が加わるわけで、総乗員+機材重量約250kg!! これでちゃんとした試乗記が書けるのかっ!! と思いつつも、アウトドアやキャンプに家族で出かけるのであれば、このぐらいの乗員+積載量もアリかな……と無理矢理納得しつつ、走り出したのである。
 


 だが、どうだ。マツダらしい、たゆまなき改良が施されたはずの2L NAエンジンは、CX-5 20Sフィールドジャーニー 4WDをスルスルとスムースに加速させる。かつての同グレードとは比べ物にならない力感で走り出たのだった。これまでCX-5はトルクに溢れる「スカイアクティブD」=クリーンディーゼルターボモデルが最良の選択、2L NAモデルは価格だけの価値……なぁんて思っていたのだが、考え方をあらためなくてはいけない……。
 


 しかも、車体弾性振動低減のためのNo.3クロスバー(車体中心を左右に走るバー)の剛性UP(スポット増しと減衰ボンドの減衰構造で振動を熱に逃がす)、シートフレームの捻じれ剛性をUP(シート締結面拡大、シート取付ピッチ縮小)。それに加え、シートの骨盤角度の最適化、サスペンションのばね、ダンパー特性の最適化といったビッグマイナーチェンジの効果も歴然。オールシーズンタイヤだから、直前に乗ったマツダ「CX-5 XDスポーツアピアランス」ほどのロードノイズの遮断(というか、発生)による静粛性やハイレベルでの操縦安定性は望めないものの、それでも静かに、爽快に、ストレスなく首都高速をクルージングすることができた。
 


 225/65R17サイズのヨコハマ・ジオランダーのオールシーズンタイヤ装着でも粒の荒いアスファルト、ゼブラゾーンのノイズは微小であり、サスペンションの見直しによるフラットに徹した乗り心地や快適感もXDスポーツアピアランス(FF)に遜色なし。これなら2L NAモデルを選んでも、動力性能的にまったく問題ないと思えたのも本当だ。
 
 

 

新採用「Miドライブ」で本気のオフロード走破性を獲得

 もし、乗車人数や荷物の積載量によって、坂道などでパワー不足を感じたとしても、新型CX-5には「Miドライブ」という神器がある。スポーツモードにセットすれば、よりアクセルレスポンスに優れたパワーフィールを味わわせてくれるから、まず心配はいらないだろう。
 


 そうそう、フィールドジャーニー専用の「オフロード」モードは、さすがに都会の試乗では試せなかったものの、試乗会場には特設のモーグルコースが用意されていた。ノーマルモードで車輪が浮いて空転しているような場面では、さすがに駆動力不足で前に進めない。が、Miドライブをメーター盤面がアースカラーに変わるオフロードモードにセットしたとたん、空転した車輪ブレーキをかけ、接地している車輪に従来の同モードより強い駆動力を伝えてくれるため、なんなく脱出できたのである。
 


 しかも、誰もがわかりやすいひとつだけのオフロードモード制御が凝っている。GVCオフロードモード、および勾配とステアリング角度、キャンバーをセンシングすることで、山側(上り)方向ではアイドリングアップしてクリープを強め、登りやすく、谷側(下り)方向ではアイドリングダウンしてくれる制御によって、ゆっくりと安心して下ることが可能になるのだ。メーターを確認すれば、山側にステアリングを切ると、即座にアイドリング回転数がスッと上がるのが見て取れる(谷側にステアリングを切れば、逆の制御)。
 


 CX-5史上最強の走破性を手に入れたフィールドジャーニーのAWDモデルは、従来のオフロードトラクションアシストをベースに、中高速領域(150km/hまで)のAWDトルクを増強したこともあり、日本の整備された道路環境においては、とくに高速道路の横風や大雨といった場面で威力を発揮してくれるに違い。「GVC Plus」などの効果とともに、悪天候下での余裕、安心感とともに、運転の疲れにくさに直結するはずである。
 


 ということで、フィールドジャーニーはCX-5で楽しむシーンを大きく広げてくれるアウトドア志向の強いグレードとして、デビューから5年を経たCX-5に新たな魅力、商品力、そしてこれまでとは違う趣味、趣向のユーザーの獲得をもたらしてくれる存在であることは間違いないと思えた。年次改良、マイナーチェンジの域を大きく超えた今回のビッグマイナーチェンジが施されたCX-5は、マジにパワーユニット、グレードを問わず、今が買い時ではないだろうか。
 
 

 

CX-5 20Sフィールドジャーニーのスペック

■CX-5 20S Field Journey(4WD)主要諸元
〇全長×全幅×全高:4575mm×1845mm×1690mm
〇ホイールベース:2700mm
〇車両重量:1600kg
〇乗車定員:5名
〇最小回転半径:5.5m
〇エンジン種類:直列4気筒DOHC
〇総排気量:1997cc
〇最高出力:115kW(156ps)/6000rpm
〇最大トルク:199N・m/4000mm
〇燃料タンク容量:58L
〇トランスミッション:6速AT
〇燃料消費率(WLTCモード):14.0km/L
〇サスペンション 前/後:マクファーソンストラット/マルチリンク
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
〇タイヤ 前・後:225/65R17
〇車両本体価格:323万4000円

TEXT:青山尚暉
提供:Auto Messe Web

【関連リンク】
【試乗】マツダCX-5を買うならこの瞬間! 最新モデルに乗ったら「圧倒的最良」だった
意外と重宝する「撥水シート」と、もうひとつは?「アウトドア最強のSUV」の必須装備ふたつ
軟派なSUVじゃ入れない悪路こそ生息地! 「ホンモノの男前SUV」であるための3条件
【アウトドアで使えるSUVクーペ】オシャレでコンパクトな3台の積載能力を比較してみた
マツダ「G-ベクタリングコントロール」はディーラーで体感できる新発想の制御技術だった
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • ヒナタカの雑食系映画論

    『オッペンハイマー』を見る前に知ってほしい6つのこと。2つの用語、時系列、モノクロシーンの意味は?

  • どうする学校?どうなの保護者?

    なぜPTAで子どもの保険を扱うのか? 2024春、東京都Pが“別組織”で保険事業を始める理由

  • AIに負けない子の育て方

    2024年の中学入試は「弱気受験」だったというが…受験者増の人気校に見る、中受親の変化

  • アラサーが考える恋愛とお金

    仕事×子育てを両立できるのは「ごく一部の恵まれている女性」か。女性の社会進出という“風潮”が苦しい