ホンダスポーツのイメージリーダーだった代表的グレード

 ホンダのスポーツモデルを象徴するグレードは「タイプR」だろう。だがタイプR以前、80年代にはDOHCエンジンを搭載したグレードには「Si」が名付けられていて、例えばバブル期に人気を博したアコード・インスパイアは、SOHCエンジンだったことから最上級モデルでも「Si」のグレード名は与えられなかった(海外ではSOHCでもSiがある)。

 そんな「Si」だが、進化型が存在する。それが「SiR」で、シビックのタイプRを除いた最上級スポーツグレードというイメージが強い方も多いだろう。

 シビックは、初代は排ガス性能で世界を驚愕させたCVCCエンジンが著明だが、RS(ロード・セーリング)というスポーツ仕様も存在した。通称スーパーシビックと呼ばれた2代目では、ワンメイクレースが開催されてモータースポーツ文化に貢献。サッチモ(ルイ・アームストロング)の歌が印象的な3代目では、ついに「Si」が登場し、ツーリングカー選手権にも参戦を開始した。

 

 

シビック&インテグラに設定され大ヒット

 そして4代目、1.6LのZC型DOHCの「Si」を超える1.6L B16A型DOHC VTECを搭載したモデルに「SiR」の名が与えられ、「SiR」がホンダのスポーツ仕様のイメージを牽引することになる。


 ちなみにVTECが最初に搭載されたのはDA型インテグラとEF型シビックだったが、インテグラのVTEC搭載グレードは「XSi」であり、「SiR」は存在しない。3代目には「SiR」が設定されたものの、4代目(DC5型)では「タイプR」「iS」「タイプS」という名が用いられたので、「SiR」のイメージが強いのがシビックなのは当然なのかもしれない。


 そんなシビック「SiR」だが「タイプR」と違って、とことん走りを追求したモデルではないことが魅力といえる。タイプRもひとそれぞれさまざまな印象があるだろうが、基本は速さを追求したモデル。いうならばサーキットベストだ。

 対して「SiR」は高性能エンジンを搭載したスポーツカーであり、快適装備も充実。その昔、クルマ(おやじセダン)を買う際に「一番良いやつ持ってこい」(一番高い仕様を買う)」文化があったはずだが、ホンダは一番良いやつはかなり速いモデルであったことが面白い。つまり、日常使いで快適ながらその気になればめっぽう速い。それが「SiR」だ。


 そして5代目(EG型)にも「SiR」が設定されていて、こちらも極端な軽量化が図られず、シビックの上級スポーツモデルとしてその地位を盤石なものに。


 6代目(EK型)ではインテグラ同様に、モータースポーツ用の簡易装備モデルと充実装備仕様の「SiR」と「SiR II」が設定される。だが「タイプR」が追加設定されたことで、「SiR」はスポーティなシビックの一番速い、サーキット仕様ではないトップ・グレードとして君臨することになる。


 その後のシビックは、インテグラが廃止されたことも関係あるだろうが、「タイプR」が一段とサーキットベストのモデルとして存在しているため、現在は「SiR」の名を見ることはできない。

 

スポーティモデルが増えてSiRは減少していく

 そして変わり種というわけではないが、6代目アコード&初代トルネオに「SiR」、「SiR-T」というモデルが設定されていた。ATが「SiR」、MTが「SiR-T」という設定。ATが180ps仕様、MTが200ps仕様のF20B型2.0L直4DOHC VTECエンジンを搭載したモデルで、4ドアのスポーツ・セダンとして人気を集めた。


 その結果、マイナーチェンジでH22A型直4DOHC VTECエンジンの「ユーロR」が追加され、快適性を犠牲にしない走りモデルとして地位を確立。2.0L DOHC VTECの「SiR」も継続販売されたのだが、サーキットベストの「タイプR」と対をなすようなストリートベストの「ユーロR」が生まれたことで、「SiR」の存在感は薄れゆくことになってしまう。


 つまり、「Si」から生まれた一段とスポーティな仕様が「SiR」。タイプRのストリート仕様が「タイプS」や「ユーロR」と言えるだろう。

 F1も撤退してBEVにシフトを進めるホンダ。今後もカリカリのホットな「タイプR」はしばらく存在するであろうが、街乗りスポーツの「Si」「ユーロR」系は登場しないだろう。「タイプR」のように派手な外観を持たず、見た目普通で走りがすごい、そんな「Si」系の使命は終わってしまったのだ。


「Si」系のオーナーは、5月に支払う税金が高くても買い替えるクルマに迷っていることだろう。だが、同志は大勢いるに違いない。

TEXT:佐藤幹郎
提供:Auto Messe Web

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