建前上は「280馬力」だが本当はそれ以上の詐欺スペック


 エンジンの出力を表す単位に「馬力」がある。1馬力とは、炭鉱の排水作業に使われていた馬の動力が基準で、75kgの重さのものを1秒間に1mの割合で引き上げられる能力のこと。この「馬力」という考え方は、蒸気機関の発明で有名なジェームズ・ワットが、蒸気機関の動力性能を比較するために考案したといわれている。

 



 エコカーの時代になっても、クルマ好きにとって「馬力」は気になる単位であって、500馬力、600馬力のスポーツカーが出てきても、やはり「馬力」は大きいほうが偉いと思っている節がある。メーカーとしても高出力は技術力の証として誇りたい数字でもあるわけだが、なかにはあえて実際の出力よりもカタログ値を低く表示したクルマがある。

 



 それは2004年まで続いた、国産車の280馬力自主規制時代のクルマたちだ。国産車は1985年まで、カタログのエンジン出力をグロス値で表記していたが、それがネット値に切り替わったあたりから馬力競争がはじまる。

 



 しかし、ちょうどその1980年代後半から、交通事故死者も急増。「第2次交通戦争」と呼ばれる事態となり、当時の運輸省から馬力競争に釘が刺さり、300馬力で登場するはずだった日産のフェアレディZ(Z32)とインフィニティQ45の国内仕様は280馬力に……。

 



 この2台、輸出仕様は予定どおり300馬力で販売されたので、国内版はデチューンされていたということになる。

 

1)日産スカイラインGT-R(R32)


 そしてZ32と同じく、1989年に登場したスカイラインGT-R(R32)もカタログ値は280馬力に。こちらも市販車で300馬力、レース仕様で550馬力以上を目指して開発した、RB26DETTを積んでいたので、名目上は280馬力だったが、ノーマルでも実質的にそれ以上のパワーがあり、マフラーやエアクリーナーを交換しただけで、300馬力近いパワーがすぐに出た。

 



 同じRB26DETTでも、R33になるとECUが8ビットから16ビットに進化し、トルクも4.2%アップしているので、パワーだって間違いなく280馬力をオーバーしていたはず。

 

 

2)三菱GTO


 そのほかのクルマでは、1990年に登場した三菱GTO。

 



 GTOのエンジンは、3リッターのV6ツインターボの6G72エンジン。トルクが43.5 kgf·mもあって、ノーマルのZ32あたりを基準にすると、乗った瞬間に「あ、これは280馬力以上出ている」と実感できるパワーがあった。

 

3)マツダ・ユーノスコスモ


 もう一台印象的だったのは、マツダのユーノスコスモ。量産車唯一の3ローターエンジンにシーケンシャルツインターボをプラスした20Bエンジンの加速力は、燃費の悪さとセットで伝説的。

 



 このクルマもカタログ値は280馬力だったが、実馬力は300馬力以上だったはず。燃費はカタログ値で、6.1km/L(10・15モード)となっていたが、実測ではリッター3km台! 最高出力、燃費ともにカタログ値が当てにならないクルマだった。

 



 その他、1990年代後半になり、2リッターターボでも280馬力が珍しくなくなってきた頃には、280馬力自主規制は有名無実化……。

 ECUのセッティングやブースト圧を抑えたり、マフラーを絞って、出力を抑えていた面もあるが、280馬力といいつつ、それ以上のパワーがあるのは公然の秘密のようなものだったし、ユーザーも280馬力としか書かれていないカタログ値には興味がなく、吸排気系チューン、あるいはブーストアップなどのライトチューニングで、どこまでパワーが出るエンジンなのかということに、興味の対象は移っていった。

 



 ちなみに国内仕様の国産乗用車で最初にカタログ値で280馬力オーバーとなったのは、2004年にデビューしたホンダの4代目レジェンド(3.5リッター300馬力)。スポーツカーではなく、高級セダンを第一号に持ってくるあたりに、“お上”への気遣いがうかがえる。

 

 

Text:藤田竜太

提供・WEB CARTOP

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