犬の肛門腺絞りとは?絞らないとどうなる?

犬がお尻を気にしていたり、お尻を床にこすりつけながら歩いていたりしませんか?それは肛門腺を絞るタイミングのサインかもしれません。ここでは、肛門腺絞りをする理由や、絞らなかった時に起こりうる病気と肛門腺絞りのやり方について解説していきます。

肛門腺絞り(こうもんせんしぼり)とは

一般的には肛門絞りと言われていますが、正確には「肛門腺絞り(こうもんせんしぼり)」であり、検索する時に「校門絞り」と誤入力されることもあるようです。

そんな肛門腺絞りについてお話しする前に、まず、犬の肛門腺(こうもんせん)と肛門嚢(こうもんのう)について触れていきたいと思います。

 

肛門腺(こうもんせん)とは

スカンクは、危険を感じたり敵に襲われたりした時に、悪臭のする液体を噴出して撃退する事が有名ですね。これは肛門の両脇にある、肛門傍洞腺(肛門嚢)の中にある分泌液のニオイなんです。

犬にも同じ様に、肛門付近、肛門の左右に「肛門腺」と呼ばれる臭腺があります。肛門腺には、ふたつの小さい袋状の肛門嚢が形成されていて、袋の中には分泌液が溜まるようになっています。

ちなみに、分泌液の量や色は、多かったりちょっとだけだったりドロッとしてたりサラサラだったり、茶色だったり黄色ぽかったり、ニオイなども犬によって違います。

 

肛門腺の役割

犬が人と暮らす前、彼らが野生の生活をしていた頃、肛門腺を噴射することで外敵から身を守ったり、テリトリーを示したりする役割を担っていました。また、肛門腺の臭いは犬それぞれで臭いが違っており、お互いに相手を識別する役割もあります。

 

肛門腺絞りが必要な理由

肛門腺絞りが必要な理由として、犬が人と暮らすようになり、外敵から身を守ったり、テリトリーを示すことが少しずつ減っていくことにより、肛門腺を噴射する機会が無くなってきたことが挙げられます。

通常は、犬がうんちをする際に一緒に分泌液を排出できるのですが、肛門嚢を押し出す肛門括約筋が発達していない犬は、自力で排出できなくなってきました。チワワやトイプーなどの小型犬、肥満犬、高齢の犬などは自力で排出できないケースが多いと言われています。

 

肛門腺を絞る頻度と目安

肛門腺に分泌液が溜まる間隔は、個体差があります。それを踏まえた上で、一般的には月に1回程度の間隔で絞られることが多いです。犬をシャンプーするタイミングや、動物病院の定期検診のタイミングなどで肛門腺絞りをすると良いでしょう。

特に、犬がお尻を気にして舐めていたり、お尻を床に擦りつけていたら、肛門腺に分泌液が溜まっているサインです。

【 肛門腺を絞る頻度 】
一般的には月に1回程度の間隔。主にシャンプーする時に絞ります。

【 肛門腺に分泌液が溜まっているサイン 】
犬が肛門を舐めたり、お尻を床に擦りつけたりしている時

 

肛門腺絞りをしないと起こる病気「肛門嚢炎(こうもんのうえん)」

現代の飼い犬は、自力で分泌液を排出できなくなった影響で、病気になるリスクがあります。分泌液を肛門腺から排出できなくなると、肛門嚢にその分泌液がどんどん溜まっていきます。

そんな状態をずっと放置しておくと、細菌が繁殖して炎症を起こし、「肛門嚢炎(こうもんのうえん)」になってしまうのです。

 

肛門嚢炎の症状

肛門嚢炎になると、肛門周辺が赤く腫れて出血したり、うんちをする時に痛みで鳴いたり、肛門をしきりに舐めたり、お尻をこするように歩いたりするようになります。

また、症状が悪化すると肛門嚢が破裂してしまう事もあるため、犬の異変に気付いたらすぐに動物病院で診てもらうようにしましょう。

 

肛門腺絞りのやり方

ここでは、自宅での肛門腺絞りのやり方をご紹介します。「肛門絞りなんてやったことない」「肛門絞りって難しそう、自分にもできるかな…」と不安になる方も多いですよね。

筆者も最初はよくわからず、恐る恐る手探りで肛門腺絞りをやっていたのですが、初めて自転車が乗れる様になった時の様に、一度コツを掴むと次からは出来る様になりますのでご安心を!

肛門腺絞りをする際に、分泌液が飛んで周囲を汚してしまう事があるので、お風呂でシャンプーする前に絞るのが、洗い流すことができるのでおすすめです。

ただ、高齢犬などはシャンプー自体が負担になってしまうので、そういう場合は肛門の上にティッシュを被せて、なるべく飛び散らないようにしましょう。

犬の尻尾を持ち上げ、上の図の様に、肛門を時計に見立てて「4時」と「8時」の位置から、親指と人差し指を使って、下から押し上げる感じで肛門に向かって絞り上げます。

力を入れ過ぎると痛いので、優しく『下からゆっくり袋を押し上げる』感じで。

出ないからといって執拗にすると、肛門嚢を傷めたり、わんちゃんも嫌がりますので、その時は諦めましょう。分泌液が溜まってない場合もあるので、あせらなくて大丈夫です。

うまく出せたら、分泌液の色を見てください。茶色や灰色なら大丈夫ですが、鮮やかな赤だったり緑色をしていた時は、炎症や膿んでる可能性があるため、動物病院で診てもらうようにしましょう。

 

ここがポイント

  • 犬の尻尾を持ち上げる。
  • 「4時」と「8時」の位置から、親指と人差し指を使って、下から押し上げる感じで肛門に向かって絞り上げる。
  • 力を入れすぎない。
  • 分泌液の臭いは強烈。顔にかかったり周りに飛び散らないように気をつける。

 

まとめ

「犬の肛門腺絞り」の必要性とテクニックについてお話しましたが、いかがだったでしょうか。

溜まりやすかったり、自分で排出するのが難しいわんちゃんは、病気を未然に防ぐためにも月イチくらいで、定期的に肛門腺絞りをする事をおすすめします。

ただ、自宅でケアするのもコツを掴むまで難しいですよね。肛門腺絞りはペットサロンだけでなく、動物病院でもしてもらえるので、ぜひ一度相談してみましょう。
 

(獣医師監修:平松育子)

提供・わんちゃんホンポ

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