現在のコスパモデルから、10年、20年先を見据えたときの満足度も含めたランキング

 2021年9月14日、日産GT-R(以下R35)の2022年モデルが発表。第2世代GT-Rをオマージュした特別なカラーをまとい、これまでのR35に投入してきた技術をグレードに合わせて上手に組み合わせたT-spec(Trend Maker/Traction Masterの略)と呼ばれる特別なモデルを限定販売。車両の詳細についてはオートメッセウェブを含む自動車媒体を参照いただくとして、ここではフィナーレが近づいたR35のなかで、今後所有し続けて満足度の高いモデルはどれなのか? をあらためて考察してみた。

R35 T-SPEC


 GT-Rの不文律から言うと、最新のGT-Rが最良のGT-R。つまり、現時点でもっとも走る性能に特化したのは2022モデルのNISMOで、GTカーの本質を極めたのが2022モデルのプレミアムエディションとなるが、長く所有する=趣味性、リセール、希少性、コスパ、予算などを考えるとその選択は変わる。14年間の長きにわたって生産され、イヤーモデル、数多くのグレード、限定車が登場(モデルライフ途中で開発責任者も変わっている)してきたのだからそれも当然だろう。

 もちろん、ベストなGT-Rは人によって変わるので正解はない。今回のベスト5は「そんな意見もあるよね」と思って読んでいただきたい。

 

5位 NISMO Special Edition MY2022


 内燃機エンジンのGT-Rとして最高のパフォーマンスと完成度。製造工程、素材、制御、空力など日産の持てる最高の技術が投入されたNISMO Special Editionをベスト5に入れない理由はない。おそらく、これが最後のNISMOとなるはずなので、今後のコレクターズアイテムとして、今後は価値を高めるはずだ(とくに専用色のステルスグレーはもう新車オーダーできないが)。

GT-R NISMO




 R34GT-RファイナルのNurと同じく、部品の精度、重量を吟味し、公差をゼロに近づけたVR38DETTエンジン。クリア仕上げのカーボンボンネット、ホイールのリムに入れられた赤いライン(サプライヤーであるRAYSの特殊技術)など、性能、ビジュアルを含めてファイナルモデル(日産からの公式発表はない)に相応しい演出が加えられているのは、田村CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)らしい。

GT-R NISMO



 2020年モデルで速さだけでなく、乗り味も洗練され、サーキットを楽にこなしながら、街乗りも快適性を担保するNISMO。標準仕様もGTとして素晴らしい出来栄えだが、NISMOを知らなければという前書きが付く。問題となるのは2468万円の価格くらい。購入できた人は羨ましい限りだ。

GT-R NISMO

 

4位 2015年モデル


 2021年10月現在において、可能な限りリーズナブルで、長くGT-Rを楽しむとしたらどれを選ぶか、を考えた場合のベストは2015年モデル。水野最終モデルとなる2013年モデルも同価格帯で選べるが、さらにストリートでの乗り心地もよく、イナズマヘッドライトや丸テールという人気の高いビジュアル、経年劣化や不具合の少なさも考慮して考えると、2015年モデルは魅力的に映る(2014年モデルも同様だが、相場が変わらないので洗練度の高い2015年モデルをチョイス。ちなみに2007年からの前期モデルは短時間でスポーツ走行を楽しむならよいが、長時間乗ることを考えると苦痛になる)。

GT-R


  トランスアクスルほかドライブシャフトの精度向上、フライホイールハウジング内の改良が施されるなど、パワートレインはほぼ完熟の域。パワーも550psと現行モデルと比べても見劣りせず、気負わず安心して乗れることは間違いない。第2世代GT-Rの高騰を受けて、この1、2年でR35の中古車価格はアンダーが600万円と100万円以上アップしたが、2015年モデルは750万円前後からとあまり大きな値上がりはしていない。

GT-R



 ちなみに現行顔になった2017年モデルは1000万円なので、あえて中古を選ぶメリットは少ない。総合すると2015年モデルのコストパフォーマンスが高いことがわかる。この価格台だと5万km以上走行している個体となることが多いのだが、GT-Rの部品はコストが掛けられており、その程度の距離なら劣化を感じることは少ない。事故歴がなく、内外装の状態で吟味すればいい個体に出会えるはずだ。

GT-R

 

3位 エゴイスト


 スーパーカーの世界へと足を踏み入れ、ユーザーに合わせたテーラーメイドをR35に取り入れた「エゴイスト」を3位としたい。アッパーカラー4色、ロアカラー10色の合計20種類の組み合わせから選択できるインテリアは、専用キルティングが施されたセミアニリン本革シート/ナッパ本革&アルカンターラの高級素材を採用。ドイツの工房に送り、完成したものを日本で仕立てるという工程を経る。

GT-R




 足まわりも専用セッティングが与えられ、標準車と異なる上質な世界を作り上げている(ホイールはスペックVと同じ軽量タイプを採用)。オプションのボーズ製オーディオはユーザーの体形やシート位置に合わせてセッティングが行われ、センターパッドのGT-Rエンブレムは輪島蒔絵が採用されるなど演出、雰囲気作りまで踏み込んだ特別なGT-Rだ。

GT-R



 パーツの取り付けは栃木工場でラインから外れた専用工房が用意され、1台1台丁寧に仕上げられていた(購入者は希望すればインテリアの組み立て工程を見学できた)。

GT-R



 残念ながら日本ではこのコンセプトは受け入れられることはなく、2年間(2011、2012年モデル)で28台のみがラインオフしたに過ぎないが、コレクターズアイテムとしての価値は抜群だ。エゴイスト専用色であるアルティメイトオパールホワイトならばなおよし。

 

2位 2011年式スペックV


 選出理由は1位と同じだが、希少性と速さに対する崇高さで一歩譲るため、R35初のエボリューションモデルであるスペックVを2位としたい。


 欲をいえば初のマイナーチェンジで完成度をさらに高めた最終型2011年モデルがベスト。とにかく走ることを鍛え上げたモデルで、専用のビルシュタイン製ダンパー、ブレンボ製カーボンローター(国内初)、チタンマフラー、カーボン製リヤディフューザー/リヤスポイラー、RAYS製軽量アルミホイール、レカロ製カーボンバケットシート、リヤシート廃止、専用ブリヂストンタイヤと内容はてんこ盛り。


 これによって60kgのダイエットも実現。さらに、歴代唯一のハイギヤ―ド・ブースト(80秒間過給圧を高める装備)を装着することでパフォーマンス面も大きく向上させる(エンジンの組み立て精度が標準仕様と異なる噂も)など、特別感も文句なしだ。これだけの装備が付いて1575万円はいま考えてもバーゲンプライスであり、いくつかの部品が現行のNISMOにも採用されていることを見ても、すべてが本物であったことに異論はないはずだ。



 ただ、カーボンブレーキは過渡期でサーキットでは問題もあるなど、完成度は現行NISMOのほうが上だが、見た目はノーマル然としながら走らせれば圧倒的に速いという羊の皮を被った狼的な仕上がりのほうがGT-Rらしいと判断。ここは完全に好みの問題だ。

 

1位 GT-R NISMO Nアタックパッケージ Akit装着車


 R35は輸入スーパーカーと本気で渡り合える性能を持った、日本初のスーパースポーツ。個人的には手に入れられるなら、とびっきりの速さを兼ね備えたマシンが欲しい。それを考えるならば1位はこれしかない。ニスモNアタックパッケージAkitとは、2013年にドイツ・ニュルブルクリンクサーキットで量産車最速タイム(7分8秒679)を樹立した、GT-R NISMOと同じ仕様を作り上げるために用意された専用オプション。製作はNISMO大森ファクトリーが担当。手作業で1台1台丁寧に組み上げられた。



 オーリンズ製4WAY車高調、専用スタビライザー/フロントフェンダー/カーボン製ハイマウントリヤウイング/前後LSD/ バケットシートなど、サーキットでの速さを極めるためだけにスペシャルパーツが開発された。



 特筆すべきは市販車としてはありえない、カーボンリヤバルクヘッドが設定(リヤシートはレスとなる)されていること。記録達成のために必要不可欠だったそうだが、「R35の速さを世界に知らしめる」ためにはなりふり構わない開発陣の強い思いに、GT-Rファンならばロマンを感じるはずだ。



 ちなみにこのパッケージオプションの価格は2017年モデル向けで900万円。2014年モデル登場時は820万円で、前後LSDやカーボンインタークーラーパイピングを装着せず、4シーターのままとなる500万円のBkitもあった。2019年7月末を持って受付を終了しているので、2020年モデル以降は存在しない。


 性能だけでなく価格もスーパーだった。日常の使い勝手は相当スポイルされ、その性能をフルに発揮することは難しいが、世界一を記録したマシンと同じ性能を有したR35を所有している満足度はかなり高い。

 

まとめ:まだまだ注目のR35


 前述したとおり、最新のGT-Rが最良のGT-Rなのは間違いないが、アフターマーケットにはさまざまなパーツが用意され、直系のNISMOからもアップグレードパーツが存在する。つまり、14年間継続して作られたことで、年式を問わず楽しめるクルマとなった。パフォーマンス面(望めば1000psオーバーも可能)も、フットワーク面(乗り心地がいい、もっと硬い、最新の足にアップデートしたいなど)も自由自在に選べるため、ユーザーにとっては新しさがR35購入時の絶対正義ではなくなったと個人的には思う。

 とくに今回セレクトしたトップ3は、R35を今から自分で所有して満足できるのはどれか、新型車と並んでも見劣りしない強烈な個性があるか、という基準で選んだ。GT-Rは庶民にとって特別なクルマ。長く所有するならば「代えが効かない」モデルを選びたいと、誰もが思うのではないだろうか。

 2022年末での生産終了がウワサされるR35。R34ニュルのようなファイナルエディションは存在するのか? もし、あるとしたら引き出しは出尽くした感があるなかで、どのようなものを提案してくれるのか? 興味は尽きない。R35GT-Rはもう少しだけわれわれユーザーを楽しませてくれそうだ。

Text:山崎真一
提供:Auto Messe Web

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