SUVブームでも消えない欧州! 絶滅寸前の日本!「国産ワゴン」人気が衰退した理由とは

かつて一時代を築いた国産ステーションワゴンが絶滅危惧に陥っている。その一方で、輸入車にはいまださまざまなタイプのステーションワゴンが存在し、それらが輸入されていて選択肢も豊富だ。なぜ日本のステーションワゴンは絶滅寸前になってしまったのか?

ミニバンとSUVに需要を奪われた国産ワゴン


 SUVが好調に売れて車種を増やす一方、選択肢を急速に減らしたのがワゴン(正確にはステーションワゴン)だ。10〜15年前までは、トヨタにはカルディナやマークIIブリット、日産にはステージアやウイングロード、三菱にはレグナムやランサーワゴンなどが用意されていたが、今はすべて廃止されている。

 


 現時点で堅調に売られているワゴンは、レヴォーグとカローラツーリングだけだ。マツダ6ワゴンやシャトルは登録台数が下がった。5年ほど前は、国内で新車として販売される乗用車(軽自動車を含む)の10%をワゴンが占めたが、今は3〜4%と少ない。


 ワゴンが減った背景にはふたつの理由がある。ひとつは日本や北米で、ワゴンの売れ行きが下がったことだ。日本では1990年代の後半以降、車内が圧倒的に広いミニバンが売れ行きを伸ばし、2000年代には国内で売られる乗用車の20%以上を占めた(今は約15%)。ワゴンはミニバンの普及に押されて売れ行きを落とし、車種も減らした。近年ではSUVの販売比率も、以前の約5%から15%以上に増えて、ワゴンの需要を奪っている。北米ではSUVがミニバンの需要を奪った。

 


 ワゴンが減ったふたつ目の理由は、メーカーの車両開発の余裕が乏しくなり、ワゴンのテコ入れに消極的になっていることだ。さまざまな車種をそろえて新たなユーザーを獲得することより、車種を減らして効率を高めることを重視するから、人気の伸び悩むワゴンは廃止に追い込まれた。

 このようにワゴンは販売戦略の事情も伴って車種を減らしたが、機能的なメリットまで薄れたわけではない。ワゴンの全高は大半が1500mm以下だから、リヤゲートを備えた荷室の使い勝手に優れたカテゴリーでは、天井がもっとも低い。

 天井が低いと荷室高も減るから荷物の積載では不利になるが、重心も下がるため、走行安定性や乗り心地を向上させる上ではメリットも生じる。ミニバンやSUVで高速道路を走り、横風にあおられると直進安定性が下がりやすいが、ワゴンはセダンと同等に安定している。

 

欧州ではSUVブームでもステーションワゴンは消えず


 このワゴンのメリットを裏付けるのが欧州車の動向だ。メルセデス・ベンツ、アウディ、BMW、フォルクスワーゲンなどには、今でもワゴンが豊富に用意されている。

 



 欧州では高速走行の機会が日常的に多いため、低重心で走行安定性の優れたクルマが好まれる。そのためにビジネスにおいても、荷物を積みやすいワゴンが使われている。前述の通り欧州車のワゴンは日本へも多く輸入され、今のワゴンの選択肢は、日本車よりも欧州車が圧倒的に上まわる。

 日本のメーカーでは、スバルがレオーネの時代からワゴンにこだわってきた。レガシィツーリングワゴンで市場を確立させ、今でもレヴォーグを主力車種に据えている。

 



 スバルがワゴンに力を入れる理由は、クルマ作りの考え方が欧州メーカーに近いからだ。安全性に影響を与える走行安定性と乗り心地のバランスを重視するから、カテゴリーとしてはワゴンが最適で、ブランドの表現手段にも使われている。

 そしてスバルは、SUVについても1995年から、レガシィツーリングワゴンをベースにした低重心のアウトバック(当時の国内名称はレガシィグランドワゴン)を手掛けている。フォレスターも初代と2代目は、ワゴン風のボディ形状で、全高を1600mm以下に抑えていた。

 



 つまりワゴンを手掛けるか否かは、そのメーカーやブランドの安全意識も反映させている。そういう意味でも、各メーカーともにせめてコンパクトとミドルサイズの2車種くらいはワゴンを用意すべきだと思う。

Text:渡辺陽一郎

提供・WEB CARTOP

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