「GSR」「SSS」「GT-FOUR」! 長年愛される「伝統のグレード名」その意味と由来とは?

クルマにはグレード名が与えられている。とくにスポーツカーは印象的な名がつけられ、モデルによっては代々受け継がれていく名称もある。今回は有名かつ代表的な5つのグレード名を挙げ、どのような意味や思いが込められているのか? あらためて解説しよう。

スポーツグレードの横文字にはきちんと理由がある

 車名に由来があるように、数字やアルファベットが組み合わされるグレード名にも意味がある。グレードは等級を表すための用語ではあるが、同じ横文字でもメーカーによってが捉え方が違うのでひとくくりにできず、少々やっかいだったりする。今回はクルマ好きに親しまれている各メーカーのスポーツグレード名をクローズアップ。その意味を解説していこう!

 

三菱編【GSR】

 三菱のスポーツグレードの筆頭といえば「GSR」。古くは1970年代の初代ギャランやFTO、スタリオンなど歴代スポーツモデルに採用されている。もっとも長く使われたのはランサーで、初代から国内最終のエボリューションXまで設定された。ちなみに2代目ランサーの車名にEXが追加されているが、これは初代を超越するという思いを込めたEXCEEDを意味している。


 さて、そんなGSRはどのような意味があるのだろうか? 答えはGran Sport Racing(車種によってはRally)。先進装備や豪華装備を兼ね備えた三菱のトップスポーツグレードという位置付けだ。

 そのほか、ランエボに設定されたグレード名を解説すると、モータースポーツベース車両である「RS」はRally Sport、7代目に追加された歴代唯一のトルコンAT仕様「GT-A」はその名を現したGrand Touring Automatic。そして、8代目から登場した「MR」はMitsubishi Racing(初代ギャランGTO MRのMRはMotorsport and Rallyという説もある)の略だ。モータースポーツで培った技術が投入された超高性能マシンの称号である。

 

スバル編【RS-RA】

 スバルからは、1989年に新世代セダン/ワゴンとして登場した初代レガシィの最強仕様であり、スバルテクニカインターナショナルことSTIが初めて手掛けたラリーコンペテションである「RStypeRA」をピックアップしよう。

 RSはRord Sportの略。RAは当時WRC(世界ラリー選手権)のグループAカテゴリーに参戦していたことから、Rally GroupAというのがもっともらしいが、これは不正解である。正しくはRecord Attempt(記録への挑戦)。これはレガシィがデビュー前にアメリカで行った10万km連続走行記録への挑戦がその由来だ。


 そのほか、RStypeRA以前に登場したモータースポーツ参戦ベース車両である「RStypeR」のRはRadical/Rally。3代目のレガシィに設定された「B4 RSK」のKはドイツ語でターボチャージャーを意味するKompressor(3代目のセダンはRSグレードに統一されたためRS=ターボではなくなったための処置)、同じく3代目の「B4 RStypeB」は足まわりに装着されたBilstein製ダンパーの略だ。ちなみにセダンに与えられた「B4」の称号は、BOXERエンジン+4WDを語源としている。

 

トヨタ編【GT-FOUR】

 トヨタもラリーマシンからチョイス。クルマ好きの誰もがその活躍に心熱くした記号といえば、やはりセリカの「GT-FOUR」だろう。4代目のST165、5代目のST185、6代目のST205と3世代にわたってWRCで活躍した。1993年に日本車として初となるドライバー/メーカーのWタイトルを獲得するなど、日本車のWRC黄金期を築いたマシンでもある。


 GT-FOURはGrand Touringに4WDを意味するFOURを組み合わせたと思いがちだが、じつはGrand Touring Fulltime On road Uniquely Responsiveを略した造語だ。日本語にすると「比類なきレスポンスを持つフルタイム4WDシステムを持つオンロードGTカー」といったところで、トヨタ開発陣の思いがグレードに込められているといっていいだろう。このグレードの意味を理解すると、FOURが大文字である理由がよくわかる。

 ちなみに1991年9月にWRCホモロゲーションモデルと登場した、5代目の「GT-FOUR RC」のRCはRally Competitionの略である。これは日本国内のみの名称で、海外名はカルロス・サインツ・リミテッドエディションだった。セリカGT-FOURの志はGRヤリスの4WDシステム「GR-FOUR」に受け継がれている。

 

日産編【SSS】

 日産のモータースポーツ活動は、サーキットを軸としたクローズドコースだけでなく、ラリーフィールドでも大活躍した。とくに1970年代のオイルショック以降から1980年代中盤までは土系イベントでの活躍が目立ち、「ラリーの日産」として世界に名を刻んでいた。

 その足がかりとなったのは、1970年のサファリラリー総合優勝で快挙を達成した3代目(510型)ブルーバード1600「SSS」。その勝利はブルーバードの高性能をアピールし、販売面のイメージアップにも繋がった。そのSSSはSuper Sport Sedanの略で、2代目410型から登場。ブルーバードのイメージをけん引するスポーツモデルとして、2001年の生産終了(10代目)までネーミングは継続された。


 ただし歴代で唯一、9代目(U13型)がSophisticated Sporty Sedan(洗練されたスポーティなセダン)と、ソフィスティケートな意味とされていたのはあまり知られていない事実である。また、ブルーバードのイメージが強いSSSだが、一時期バイオレットにもSSSグレードが存在していた。

 

マツダ【NR-A】

 マツダも日本初のフルタイム4WDスポーツマシンとして、国内外のラリーで一世風靡した6代目ファミリアGT-X(Xは未知数、未知の可能性を秘めたという意味)の紹介といきたいところだが……。シンプルすぎるので、より読解難易度の高いロードスターのモータースポーツ参戦車両である「NR-A」を取り上げる。


 残念ながらマツダでは正式には公表していないが、ある筋からの情報をまとめるとNはナンバー付き、Rはレースカー(Numberd Racecar)が語源とのこと。AはグループAやBのようなカテゴリー記号のようで、Aは一番底辺を意味しているらしい(BやCを設定する構想があったかは定かではない)。

 総合するとレースベース車両として、ナンバー付きのままレースにも参加できる入門マシンという名称だ。まさに名は体を表すグレードといえよう。また、6、7代目に設定されていたファミリアのラリー参戦ベース車両「GT-A」のAも、NR-A同様にカテゴリー記号であるそうだ(こちらはグループA)。

 ちなみに、ロードスターがグレード名に言葉の意味を持たせないのは、ロードスターは全車スポーツカーであり、特定のグレードをスポーツと呼ぶのはおかしいという考えからのようだ。

Text:山崎真一
提供:Auto Messe Web

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