ヒトとヒトとの関係は、微妙なバランスの上に成り立っているもの。今回は、仲良くしていたはずのふたりのママが、何気なく発せられた第三者の言葉によって、修復不能な関係になってしまったお話です。

平穏な生活が続くと信じて疑わなかった

「私にも悪いところは多々あったと思います。でも、もう私も引くに引けないので、今後、彼女とこれまでの関係に戻ることは絶対にありません!」
 

語気荒く今回の騒動を語ってくださったのは、北海道在住の荒木すずさん(仮名・39歳)。中学1年生の長男と小学校に通う長女、ふたりのお子さんを育てる専業主婦です。大学時代から付き合っていたご主人と結婚し、ご主人の地元である北海道へ。お子様が生まれ、ママ友もでき、楽しい日々を送っていたといいます。
 

「私は東京生まれ、東京育ち。主人について北海道に行くことに多少の不安はありましたが、実際に行ってみたら、北海道の人たちはみなさんとても優しくて、他県から来た私にも優しくしてくれました。空気は美味しいし、野菜もお肉も美味しくて、雪かきだけはちょっと大変ですが『あ~、北海道に来てよかった』って思っていました。引っ越してからしばらくは主人の実家に同居させてもらって、長男が生まれて数年経った頃に、夫の会社からほど近い新築の分譲マンションに移ったんです。両隣とも私の長男と同じ年の子どもを持つママさんだったのですぐに仲良くなり、3家族でキャンプをしたり、1時間ほどで行ける温泉に行ったりするようになりました」
 

すずさんのお子さんとお隣家族の息子さんたちは、もちろん同じ小学校。入学した際、偶然にも同じクラスになったことからさらに仲良くなり、学校が終わると日替わりでそれぞれの家で遊ぶようになったといいます。
 

「息子たちは学校でも町内でも有名な仲良し3人組になりました。どこに行くにも何をするにも必ず3人一緒で、遠足の班も必ず一緒。まるで子犬がじゃれあっているようで、見ている私たちも微笑ましい限りでした。でも……3年生になってすぐの頃、クラス担任が余計なひとことを言ってしまったせいで、ひとりのママが妙に意識するようになってしまったんです」
 

『おまえたち3人の中で、いちばん優秀な大人になるのは、誰なんだろうなぁ』
 

そう担任から言われたけど、優秀な大人っていうのはどういう意味?と。帰ってきた息子さんから問われたすずさんは、戸惑いを隠せなかったといいます。
 

「息子たちは義務教育という初期も初期の勉学のまっただ中。スタートラインにも立っていませんし、そもそも人間に優劣なんてつけるべきではないでしょう? なんてことを言うんだ?って、担任に対して腹が立ちまして。学校に抗議して謝罪してもらいました(笑)。でも、隣家のうちの一軒が担任の言葉に過剰に反応してしまったらしく、急に『ウチの息子を塾に通わせることにしました。もうお宅の息子さんたちとは遊ばせません』って言いだしたんです」
 

小6の学力試験。結果を見た隣家のママ友が大爆発

家族それぞれに考え方も違うのだから仕方ないだろうと悲しく思いながらも、そのママ友(以下、塾ママ)の言葉を尊重したというすずさん。息子さんに対しては「あの子は塾に行くことになって、しばらく遊べないみたい。寂しいけど、学校で仲良くしてくるんだよ」と説明し、以後、残った一軒とはこれまで通り仲良く付き合っていたといいます。
 

「5年生になった頃から、学校でも塾に通う子どもが増えてきましたが、ウチは公立中学校に行かせる予定でいたので小学生の間は塾は必要ないと考えていました。仲良くしていたママ友家族も同じような価値観だったので、息子たちふたりは、それこそ子ザルのように伸び伸びと過ごしていたんです」
 

問題が起きたのは小学校6年生のとき。全国一斉の学力試験が行われ、結果が戻ってきた翌日のことだったといいます。
 

「たまたま息子と一緒に買い物に出かけようとしていたとき、塾ママがものすごい勢いでこちらに走ってきて、息子に対し『なんで塾に行かせたウチの子より、おまえのほうが成績がいいんだ! こんなの間違っている! 優秀なのはウチの子のほう! ウチの子の答案をカンニングしたんだろう!?』ってわめき立てるんです。
 

私は思わずカ~ッとして『息子はカンニングなんて絶対にしません。そもそも、自分より成績が悪い子の答案をカンニングして、成績が良くなるはずがないでしょう! あなたの息子の出来が悪いからって、私の息子にバカバカしい言いがかりをつけないでください!』って、大声で言い返してしまいました。“出来が悪い”はさすがに言い過ぎたなぁって後から反省したのですが、その後息子に聞いたところ、ウチの息子の成績は中の上くらい、仲の良いママ友の子どもは上の下くらいだったのですが、塾ママの子の成績は下の下だったらしくて……」
 

塾ママが引きこもりに。謝罪を要求されたすずさんは――

その時はすずさんの剣幕に押された塾ママでしたが、その後、マンションの廊下でばったり会った際に舌打ちをしながらにらんでくるなど、塾ママから荒んだ対応をされ、さすがにイライラが頂点に達したすずさん。
 

「塾ママのご主人も交えて話し合いをしたのですが、塾ママはキレまくりで話になりませんでした。隣人として最低限のマナーがあるはずだから、にらんだり舌打ちしたりするのはやめてほしいし、できないのであれば、こちらかもあなたをにらむし舌打ちもする!と伝えたんです。
 

どうやらそれ以来、塾ママは引きこもりになってしまったようで。しばらくしてから『妻があなた方をとても怖がっている。形だけでもいいから妻に謝罪して、外に出るよう言ってほしい』という要望が塾ママのご主人から届きました。『彼女のほうから息子にカンニング疑惑をかけたことを謝罪してこない限り、こちらから何か謝ることは絶対にありません』ってご主人に伝えましたけどね。もちろん、謝られたところで前のように仲良くすることは絶対にありませんけど!」
 

今年中学に上がった息子さんたちは、コロナ禍の中も元気に暮らし、それぞれに学校生活を楽しんでいるとのこと。また、子どもたち同士の仲は悪くないことが唯一の救いなのだとすずさん。ただ、この一件で、ママ友関係というのは、本当に微妙なバランスの上に成り立っていることを実感したそうです。
 

あのとき担任が余計なことを言わなければ……とも思いますが、いずれ考え方の違いは大きくなったことでしょう。ママ友関係というのは一般的な友情とは違い、いつ壊れるとも分からないもの。そうした認識は持っていたほうがいいのかもしれませんね。