東京モーターショー2017で見えた「EV」の現在地とは?

2017年の東京モーターショーは、コンセプトカーの多くがピュアEVであり、EVの時代が近づきつつあることを予感させるには十分だった。しかし、登場するのは2020年以降になりそうだ。まだ解決しなければならない課題も多そうだ。

日本で買えるピュアEVは8台。しかし航続可能距離や充電面には不満も

2017年11月現在、日本で正規で買えるピュアEV(バッテリーEV)は、新型に移行した日産リーフ、軽自動車のアイミーブ、バンのe-NV200、モデルSとモデルXのテスラ、BMW i3、登場したばかりのVW e-ゴルフ、GLMのトミーカイラZZと10台に届いていない。
 

しかし、EVのオーナーになったことがある方なら、ガソリンスタンドに行かずにすむなどの利点を享受する一方で、航続可能距離への不安(とくにヒーターが欠かせない冬場は航続可能距離が大きく落ちる)、スマホ同様に使用頻度が高まるほどバッテリーの持ちが悪くなる。
 

さらに、急速充電器でも充電には30分かかるなど充電面への不満などもあるかもしれない。充電スポットは確かに増えているが、サービスエリアでも1カ所しかない場合もあり、休日などは充電待ちの可能性も高くなる。
 

東京モーターショーはEV時代を予感させたが…

e-EVOLUTION CONCEPT
三菱自動車の次世代EVを示す「e-EVOLUTION CONCEPT」。2020年代前半くらいのEVの姿を示した

2017年の東京モーターショーは、コンセプトカーの多くがピュアEVであり、EVの時代が近づきつつあることを予感させるには十分だった。
 

東京モーターショーで気がついたのは、EVのコンセプトカーを各社が多く展示していたものの、「明日」買えるEVは少なく、来年あたりに買えるモデルも少なかった。2020年に投入するとしているホンダのコンパクトEV、トヨタとマツダも2020年、つまり2〜3年後に早ければ登場するという流れではないだろうか。

「E-FUSO」
ダイムラー傘下の三菱ふそうが披露した電気商用車ブランドの「E-FUSO」。「Vision ONE」は航続可能距離350km。この航続可能距離だと、近距離間の拠点輸送など使用は限定されるだろう

 
環境悪化と国策により電動化を急ぐ中国、環境規制が厳しいアメリカのカリフォルニア州などをのぞき、環境悪化でEVシフトを急いでいる欧州も含めて世界的にみてもEV化の主役はプラグインハイブリッド(PHEV)やマイルドハイブリッド(48Vハイブリッドシステム)だ。なお、経済産業省では、日本における2030年のEV、PHEVの普及目標を20〜30%と掲げている。
 

欧州勢のピュアEV
電動化を急ぐ欧州勢もピュアEVは都市部の短距離用で、従来のガソリン自動車に変わるのは当面はプラグインハイブリッドが主役

東京モーターショーでマツダ・ブースの「スカイアクティブX」と呼ばれる次世代エンジンの前に黒山の人だかりができていたが、ガソリンエンジンにもまだまだできることがある。
 

「電気がどうやって生み出されたか」を考える必要も

また、走行時にCO2を排出しないEVは、「ゼロエミッション」と呼ばれ、環境への影響が少ないとされるが、その電気がどうやって生み出されたかを考える必要がある。
 

「Well-to-Wheel(油田からタイヤまで)」という考え方がある。その電気が石油由来(石炭などの火力発電)で生み出されたものであれば、ハイブリッド車などよりもトータルでのCO2排出量が増えてしまう。原子力発電所がほとんど停止している日本では約8割が火力発電という現実がある。
 

さらに、日本経済新聞によると、経済産業省が「Well-to-Wheel」の面から中国でのCO2排出量を試算したところ、石炭による火力発電が多い中国ではEVが82g/kmと、ハイブリッド車の69g/kmよりもCO2排出量が増える結果が出たという。
 

バッテリーの性能や価格だけでなく、こうしたエネルギー(発電)問題、バッテリーの再利用の確立など課題はまだ多く、「EVシフト」は一足飛びにはいかないことも東京モーターショーでは明らかになった感がある。

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