トヨタ、マツダが資本提携 EV共同開発も視野に入れる両社の思惑は?

2017年8月4日、トヨタとマツダの業務資本提携が発表された。お互い約5%ずつ株を持ち合う形での提携で(5.05%、総額約500億円)、マツダの自主独立性を謳っているのが特徴だ。北米に合弁で工場を新設し、将来的にはEV共同開発も視野に入れているという。その狙いとは?

米国に合弁で新工場を設立し、EV共同開発も視野に入れる

2017年8月4日、トヨタとマツダの業務資本提携が発表された。お互い約5%ずつ株を持ち合う形での提携で(5.05%、総額約500億円)、マツダの自主独立性を謳っているのが特徴だ。北米に合弁で工場を新設し、将来的にはEV共同開発も視野に入れているという。その狙いとは?
 

水面下で進んでいた!? トヨタとマツダの業務資本提携

8月4日の早朝、一部報道でトヨタとマツダが業務資本提携すると報じられた。私はその日、朝からマツダのプレス向け試乗会(CX-3)に出向いていて、広報部(商品広報)の方々と話す機会があったが、彼らも報道で初めて知ったという。一方のトヨタも同様で、都内のホテルで行われた記者会見で「いつ知ったのか」と話を振ると朝のニュースとのこと。
 

今回のトヨタとマツダの提携は、トヨタの豊田章男社長が記者会見で「婚約から結婚」とたとえていたが、「19時から記者会見を開く」とトヨタとマツダの関係者に伝えられた時点で、両社の関係者(男性)は赤いネクタイを用意するように、という指示があったそうだ。
 

「婚約」から「結婚」に進展。500億円の出資金は「結納金」

トヨタ・マツダ
トヨタの豊田章男社長とマツダの小飼雅道社長の記者会見は、将来の戦略を大きく左右する緊張感あふれるものだったが、「婚約から結婚」という表現を豊田社長がしたように笑顔も見られた(写真/塚田勝弘)

両社の提携は、「婚約」にあたる2015年5月の業務提携合意から、「結婚」にあたる今回の業務資本提携に発展(進展)したもの。なお、2015年時の提携では、マツダの小飼雅道社長は資本提携には否定的だった。
 

記者会見でトヨタの豊田章男社長は、今回両社が相互で出資する500億円を結納金にたとえていたのも印象的だった。
 

トヨタ・グループに入るのではなくマツダの自主独立性を強調

トヨタの出資で同額を相互出資するというのは異例だ。それだけマツダの企業風土を重んじ、クルマ作りに対して高い評価をしている証だろう。
 

記者会見で豊田章男社長は、「婚約から結婚」に至るまでの間、マツダの試験場などを訪れ、マツダのスローガンである「Be a Driver.」まで例に挙げて同社の「クルマへの愛」から感銘を受けたエピソードを披露していた。
 

一方、マツダの小飼社長は、トヨタがEVや自動運転などあらゆる先端分野に貪欲に投資しながら、豊田社長が掲げる「もっといいクルマづくり」について凄みすら感じたと表現している。
 

しかし、今回の資本提携では、両社の業務提携関係の進捗に応じて、同提携に基づき、さらなる資本提携関係の強化についても検討するとされている。自主独立性を謳いながらも将来的には、マツダもトヨタの1000万台規模の恩恵を「さらに受ける」可能性もあるということだろう。
 

最初の果実は、米国での完成車の生産合弁会社の設立

今回の提携による最初の果実は、米国での完成車の生産合弁会社の設立。トヨタとマツダは、合弁で30万台規模の生産能力を持つ新工場を両社折半出資で検討すると合意。トヨタはカローラの生産を、マツダは新しいクロスオーバー(SUV)の生産を見据えているという。
 

マツダは、メキシコには工場を持つものの、米国には生産拠点がなかった。注力する北米市場での為替変動リスクに備えられるし、トヨタも米国で4000人規模の雇用を生み出すことで、トランプ大統領の「口撃」をかわせる面もあるだろう。なお、豊田社長は、大統領の年初の発言は今回の新工場設立とは関係ない、と強調していた。
 

「エコカー=退屈な走り」のイメージから脱却できるか

さらに、「電気自動車(EV)の共同技術開発」、「コネクティッド技術の共同開発」、「先進安全分野における技術連携」および「商品補完の拡充」を推進していくことを合意したとしている。
 

トヨタはグループを挙げてEV開発を急いでいて、内燃機関(ガソリン、ディーゼルエンジン)の高効率化を図っているマツダも将来はEVが必要なのは重々理解しているはず。両社ともにEV開発、EVのリース販売などの実績はあるものの、最先端を走るEV開発には、多くのノウハウや知見が欠かせない。これらを互いに補完する狙いもある。
 

記者会見で両社長が強調していたのは、EVでも走りの面で「ブランドの味」が必要であるという点だ。トヨタとマツダがどんなEVを世に送り出してくるのか、今回の提携は「エコカー(EV)=退屈な走り」というイメージから脱却する一歩になることを願わずにはいられない。

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