■「胎教」を考える時に知っておきたいこと
●胎児の発育
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感は、目、耳、鼻、舌、皮膚の各器官により身体外の情報を得る手段です。健常な成人には当たり前の機能ですが、実は、生命が長い歴史の中で獲得した貴重な能力です。

 

ヒト発生学には「個体発生は系統発生を繰り返す」という概念があります。受精卵ができて、初めの数週間の短期間に、鰓(えら)ができたり、尻尾があったり、地球上の生命進化の過程を経て、妊娠12週頃にヒトの器官の元ができあがります。12週以降は、数ヶ月をかけて器官の発育、機能の成熟、各器官の連携が完成し子宮外での生活が可能になります。

 

妊娠28週頃には、胎児自身のリズムで睡眠・覚醒などの周期的な活動が始まります。大人の日内リズムは朝の日光でリセットされますが、胎児に日光は届かないので、それに相当する外部からの周期的な刺激として、母親の活動や食事が考えられます。つまり、母親がだいたい同じ時間に起きて朝食を取ることで、増加するアドレナリンやブドウ糖が胎盤を経由して胎児に伝わり、胎児の日内リズムの形成に役立つのです(メトロノーム効果)。

 

●脳神経について
大脳の底部から左右12対出ている神経が脳神経で、前から順番に番号がついています。知覚に関連するものは、

 

第1脳神経:嗅神経(嗅覚)
第2脳神経:視神経(視覚)
第5脳神経:三叉神経(顔面皮膚の触覚と味覚の一部)
第7脳神経:顔面神経(味覚の一部)
第8脳神経:内耳神経(聴覚と平衡覚)
第9脳神経:舌咽神経(味覚の一部)

 

胎児から新生児にかけて、知覚神経の発達には時期の違いがあります。最も早く発達するのは1番前の嗅神経で、生まれたばかりの新生児に最も重要な知覚です。ヒトでは視覚や聴覚が発達したため、退化している可能性がありますが、昆虫や爬虫類、多くの哺乳類には、ごく微量の物質を嗅ぎ分ける生存のために不可欠な知覚です。

 

視覚と聴覚は、出生後に光や音を感じて、新生児、乳児期に発達する機能です。確かに、妊娠後半期になると、母親のおなかの上から音響振動刺激や強い光を当てると、胎動があったり心拍数が変化しますが、おそらく胎児には迷惑な刺激に違いありません。