■消費税の軽減税率は主に2つの理由から
さて、こうした消費税の軽減税率がおおむね各国で導入されているのはなぜでしょうか。これには2つの理由が存在すると考えます。

 

1つは、軽減を願う産業界や企業による要請が挙げられます。軽減税率の適用対象か否かで、仮に税率が10%も異なるのであれば、当然ながら低い税率のモノを消費者は買いたがるでしょう。また、軽減税率の適用対象となる企業においても、本来よりも10%安く販売できるメリットを持つことになります。そのため、軽減税率の適用となるための運動が実を結んだ結果、各国で軽減税率導入の動きが見られるともいえます。

 

もう1つは、消費税における「逆進性」を挙げることができます。収入に対する消費額の割合が大きい、つまり税負担が重いのは、高所得者層よりも低所得者層です。そのため、特に生活必需品に対しては、軽減税率を適用することで、低所得者層の負担を軽減する役割を果たしているといえます。

 

なお、本来の税制の原則からいえば、軽減税率の導入のように税率を複数に分けることは望ましくありません。これは、軽減税率の導入により、個人や企業の行動により大きな変化をもたらすおそれがあるためです。

 

例えば、個人の消費行動を変え(「外食ではなくテイクアウトにする」など)、それにより軽減税率適用の業種だけがうるおうといったこともあるかもしれません。経済学的にいえば、「経済厚生の損失拡大」につながるおそれがあります。つまり、全体で見れば、経済活動のゆがみにより、軽減税率を適用しなかったほうがよかったという結論も出るおそれがあるのです。

 

また、当然ながら、税率の一本化のときよりも軽減税率を導入したときのほうが、見込める税収は減ることになります。

 

今後、日本でも軽減税率の詳細がさらに決まっていくことになると思われます。果たしてそれが本当に望ましいのか、どのように決めることが透明性がありわかりやすいのか。選挙対策などといった短期的な視点ではなく、長期的な視野(社会保障、経済成長など)から望ましい制度設計を考えていただきたいものです。