■どうして保育園は足りないのか
ここで誰もが思うのが、保育園が足りないなら作ればいいんじゃない?ということです。そうなんです、増やせばいいんです。が、これがまたさまざまなハードルがあると言われていて。

 

●その1:保育士が足りない
保育というのは、どう頑張っても労働集約型で、例えば認可保育所の規定だと、0歳児が3人いると保育士は1人必要だし、1歳・2歳児が6人いたら保育士は1人必要です。だから預けたい人に比例して必ず保育士も必要になるのですが、これがまた足りない。その理由の1つとして、保育士の給料の低さが挙げられます。

 

保育士の年収は他の職種に比べ、なんと約100万円も低いんです。平均年収は34.7歳で約310万円と、全職種の平均年収の414万円よりもはるかに劣ります(*3)。この背景にあるのが、保育所、とりわけ認可保育所においては、親が支払う保育料の上限が約10万円と決まっていることです。この上限が決まっていると、保育士の給料の上限も決まってしまい、保育士の給料も低くなるという構造に陥っているわけですね。

 

しかし、それだけではありません。子どもの命を預かるという責任に加え、保護者の就業の多様化にともない、延長保育の対応やモンスターペアレントの増加、さらには子どもの食物アレルギー対応など、仕事は増える一方です。しかし保育士の人数はそのまま。

 

そんな環境なものだから、一度保育士になって働いても、辞めてしまって戻らない「隠れ保育士」がいます。その数にして約57万人(*4)。いやいや、これも隠れすぎだなぁ……! この潜在保育士の掘り起こしが重要ですが、給与面や環境面など、簡単に変えられる構造になっていないのが問題なのだと思います。

 

●その2:新規参入障壁が高い
認可保育所をいざ作ろうという団体があるとしても、認可保育所の認可基準は厳しく、定員が20人以上で0歳児・1歳児の一人当たりの基準面積が3.3㎡必要になってくるんですね。都心でこんなスペースを確保することが、そもそも難しいのです。

 

さらに補助金で成り立つ構造にある保育所は、その補助金対象外の認可外保育所となると財政的に厳しくなる。親から高い保育料を徴収してもなお、です。保育所ではなく、駐車場を作った方が儲かると言われているくらい、儲からないものになってしまっている。

 

儲からないなら、利用者からの徴収料をあげ、経営すればいい。市場原理に従って、需要がこんなにもあるのだから、値上がりするのが経済の一般的な流れですよね。ところが前述したように、認可保育所は利用料に上限が定められています。認可外保育所でも、値段を上げたからといって質の高い保育ができるのかと言われると、保育士不足などによりそううまくはいかない。だから市場原理では解決しないと言われているんですね。

 

おまけに、「子どもの声がうるさい」と言って近隣住民から保育所新設の反対が起こる……なんて話題もありますよね。主に高齢者からの反対が多いといいますが、そもそも高齢者世帯が「小さな子どもを預けてまで仕事をするなんて」という考え方が多いと言われる世代でもあるので、もはや考え方の違いから起こる世帯間衝突なんだなぁと思っています。なんだか悲しくなってきたのでこの辺にしましょう。

 

*3:平成25年分民間給与実態統計調査結果について 国税庁
*4:潜在保育士の実態について 平成23年度厚生労働省委託事業