また、高齢者関連の本である。『老人たちの裏社会』(新郷由起著、宝島社)。この本は高齢者の変化のうち、万引き、ストーカー、暴行・DV、売春、ホームレス、孤立死について、本人たちはもちろん、関連する人たちの声を集めたもの。

 

統計的に高齢者の比率増以上に万引きやストーカーなどが増えて話題になっているテーマもあれば、社会的にはあまり話題になっていないというか、見えていない売春やAV出演まで、取り上げる範囲は広く、高齢者といっても限られた人達しか知らない私にはかなりびっくりの内容だった。

 

確かに電車内その他で切れる高齢者を見ることが増えているように感じてはいたが、こんなに社会のあちこちで問題(とばかり言えないものもあるにはあるが)となっていたとは、である。

 

そうした行動に走る要因はいくつかあるようだが、ひとつ、深く頷いたのは、暴行・DVの項のまとめ部分の、筑波大学名誉教授、情動認知行動療法研究所の宗像恒次さんのコメントである。年を取れば、それまでできたことができなくなり、不安、ストレスがたまる。かつてできたという理想があるから、現実とのギャップが膨らむ。

 

「理想と現実のギャップが不満になります。認めてほしい、感謝してほしい、愛してほしい……と、承認欲求が肥大化すれば、不充足感しかなくなる。そもそも、己の価値や評価を他者に委ねてきた生き方を転換する必要があるのです」

 

現役時代には地位や収入その他社会からの評価があるが、リタイア後の多くの場合、それらは失われる。そこで、ずっと他者からの評価を自分のよりどころとしてきた人はよって立つものが無くなってしまう。

 

「老年期に入れば、誰しもが“他者報酬型”ではあり得ず、自分で自分を認める“自己報酬型”へ切り替えないと不満は溜まる一方になります。(中略)しかし、自分に対して確固たる自信がないと自己報酬型の評価は適いません。裏を返せば、暴力やDVなどの行動に出る高齢者は、その域まで達せず、成熟しないまま老年期に入ってしまったともいえるでしょう」

 

考えてみれば、学校でも会社でも多くの人は周囲からの評価を気にする。それが成績や出世に繋がるからだが、そこで評価されるのはその人のごく一部である。他者報酬型は評価する人達の視点からの評価でしかないわけだが、なかなか、そうは思えないのも事実。そのため、その一部分の評価が無くなってしまうだけで、不安になるんだろうと思う。