■「胎教に良い?」は要注意
海外ドラマ『ER緊急救命室』のファーストシーズン第19話「生と死と」はエミー賞を取った有名なシナリオです。このドラマの中で、ERのグリーン医師が、母親のおなかの上から専用装置で音響振動刺激を与え、寝ている赤ちゃんを起こして元気なことを確認しようとします。その後、母親は胎盤早期剥離を起こして、帝王切開後に死亡します。

 

これは非常によくできたシナリオで、医学的には実際にあった話を元にしていると思います。

 

現役産科医としては、あの時点で音響振動刺激を行わずに、刺激のない胎児モニタリングを続け、危険兆候が明らかになった時点で、緊急帝王切開を行っていれば、母子ともに助けられた可能性があると考えます。長年、胎児生理を専門としてきましたが、20年前から音響振動刺激装置は使用していません。

 

このようなケースは、非常にまれな確率でしか起こりませんが、子宮内の胎児が元気かどうかを確かめるために、胎児の状態を考慮せずに刺激を与えることは、思いもよらない結果を引き起こす可能性があります。

 

ネット上でキックゲームなどが紹介されています。確かに、母親が叩くサインに反応して胎動が誘発されることはあると思いますが、胎児は寝たばかりかもしれず、親の都合で無理やり起こされて嫌がっている可能性の方が高いと思います。

 

胎教を考えるなら、胎児に余分な刺激を与えないことです。自然界のほ乳類は全て、本能的に刺激をできるだけ避ける努力をしています。

 

ただし、「胎教」という概念は意味のないことではありません。母親が心がける具体的なことについて次回紹介します。