■プールでおしっこをしちゃう人

ジメジメした梅雨が終われば、待っていましたプールの季節です。オシャレ系のオッサンはフィットネスクラブやスポーツジムで年中プールで泳いでいますが、「プール」は夏の季語でもあるんで、プール=夏、と考えていいはずです。以前、プールって海外ではかなりの確率で大腸菌等に汚染されているという話をしました。

 

プールの6割で大腸菌が検出されてしまいました……米国の話です

 

塩素の強い(本当かどうかは不明)と言われているプールに入ると「目が赤くなる」という会話ってしたことありませんか?

 

「塩素の強いプールで目が赤くなる、って話、実はプールにおしっこが混入していることが原因」

 

という考え方があります。泌尿器科医(私もその端くれ)が研修医に最初に話すことで、「尿は綺麗なんだから」というのがあります。膀胱炎などの細菌に汚染されていない尿自体は医学的な見解としては「清潔」の範疇に入ります。となると、プールの中でおしっこをしてしまう不埒な輩がいてもバイキンが原因ではないことになりますので、プールで目が赤くなるのはおしっこが原因説について少々調べてみました。

 

■プールで目が赤くなるのは複雑な化学反応で産生されるトリクロラミンとシアン化合物が原因?

プールに入ると目が赤くなる、って話の元はNational Swimming Pool Foundation(略してNSPF)の見解です。「Healthy Pools Red Eye」と題して、

 

「塩素は目が赤くなる原因ではなく、プールで誰かがおしっこをしてしまうことが原因だよ」

 

と伝えています。話の内容は「プールでおっしこをしないでねキャンペーン」をCDC(アメリカ疾病予防管理センター)とNSPFが共同で開始したことを伝えるとともに、プールに入ると目が赤くなるメカニズムを解説しています。必要以上に危機感を煽るのがニセ医学・インチキ科学の手法ですけど、今回の話はそれなりに説得力のあるものです。

 

「プールの塩素と尿中の窒素が結合して刺激物が発生して目が赤くなる」

 

とNSPFのサイトは伝えています。なぜか「irritants are formed……刺激物が形成される」の刺激物自体の成分名が書かれていません。「Environmental Science & Technology」という学術誌によれば、

 

「尿や汗が塩素と反応してトリクロラミンとシアン化合物が産生する」

 

らしいのです。詳しくは「Volatile Disinfection Byproducts Resulting from Chlorination of Uric Acid: Implications for Swimming Pools」(Environ.Sci.Technol.,2014,48(6),pp 3210–3217)をご覧ください。

 

Volatile_Disinfection_Byproducts_Resulting_from_Chlorination_of_Uric_Acid__Implications_for_Swimming_Pools_-_Environmental_Science___Technology__ACS_Publications_

(前述学会誌より)

 

よくよく論文を読むと、中国のプールの話ですからCDCとNSPFがこの論文だけを参考にしたとは思えませんけど。