清らかで、みずみずしく、まるで涌きいずる岩清水のように清冽な日本酒。おいしい米とおいしい水から造られるのだから、汚れもなくきれいに造られているんだろうと思うでしょ?

 

でも、じつは、“カビ”が日本酒を造っていると聞くと驚くかもしれない。そう、あの“黴”。まさに“カビ”。日本酒の蔵は実は“カビ”だらけなのだーっ……。ぎゃーっ。

 

■カビが、米をあま~くしてくれる!
ワインは、ブドウの甘いジュースがアルコールに変わりワインになる。すごくシンプルなお酒。糖分をアルコールに変えるのは「酵母」。日本酒の原料は米。米なので糖分がない。では、どうするのか。まず米の「デンプン」を糖分に変える。この「デンプン」を「糖」に変える作業をしてくれるのが「麹(こうじ)」。この「麹」の正体が“カビ”なのだ。

 

もちろん、この“カビ”、ちゃんとその道の専門家が日本酒用に特別に繁殖させた「日本酒専用のカビ」であり、「麹」と呼ばれる。そのへんに生えるカビとは、もちろん違う。黄色味を帯びた緑色で、おかしな言い方だけど、とてもきれいなカビなのだ。

 

このカビ=麹がもつ「酵素」が、米のデンプンを糖分に変えてくれる。その糖分を酵母がアルコールに変える。ちなみに、ビールは麦が原料で、「麦芽」の酵素が麦のデンプンを糖に変え、そのあとの糖を酵母がアルコールに変えてお酒になる。どちらも穀物のでんぷんを糖に変えて、その糖をアルコールに変える流れは一緒だ。しかし、ビールは「糖化」と「アルコール発酵」を別に行うスタイル。両方を一緒にするのが日本酒。一緒に行うので日本酒は醸造酒なのにアルコール20度という高アルコールになる。このメカニズムを、日本人は大昔から理解して清酒造りをしていたって、すごくない。

 

■カビには「色」もある
デンプンを糖にかえてくれるカビ=麹には、いくつか種類がある。日本酒を造るためのカビ=麹は、「黄麹」とよばれるタイプ。黄色味を帯びた緑色をしているからそう呼ばれる。焼酎を造るのはやや白っぽい「白麹」。沖縄の泡盛を造るのは真っ黒の「黒麹」。

 

ちなみに「白」や「黒」は、「黄」よりもパワーが強く雑菌に強い。焼酎や泡盛の産地である九州や沖縄は気温も湿度も高く、雑菌にも侵されやすいので酵素力の強い「白」や「黒」を使っているのだ(焼酎の麹については「ラク学焼酎“ダレヤメ”のすすめ」にて掲載)。ちなみに中国の紹興酒は「紅麹」を使う。こちらは「紅色」のカビ。まさに色とりどり。