■メディアを呼び込む用意周到な仕掛け
発端は去年の12月、ドイツのテレビ局からの依頼でした。ダメな研究がダイエットブームに取り込まれる仕組みを探る、ドキュメンタリー番組の製作でした。次に、うさんくさいダイエットを批判する著書をもつ医師に相談し、ダークチョコレートを使った実験を行うことにしました。苦いからこそ体にいいはず、という「自然食品幻想」を利用するためです。

 

そして、実験は確かに行われました。ただし、被験者は3グループ合計でたった15人。しかも検査項目は体重だけでなく、コレステロール値や睡眠の質など、全部で18個。少人数でこれだけの項目を用意すれば、どれか1つくらいは目立った差が出てもおかしくはないです。プレスリリースでは「ダイエットに効果的ではないかという仮説を検証」とありますが、検査項目のどれかで変化が起きれば、別に体重でなくても何でもよかったのです。

 

実験の結果、たしかに低炭水化物ダイエットをしたグループは、体重が平均で2.3kg減少し、さらにダークチョコレートを食べたグループでは体重減少が10%速かったというデータが得られました。ただ、被験者の3分の2は、月経周期で体重が変動しやすい女性(3kgくらい簡単に変動)にするなど、何らかの変化が起きやすい実験条件に(わざと)設定していました。また、2.3kgで10%速いといっても、その差は0.2kg。驚くほどの差ではありません。

 

さて、こんないい加減な実験条件で行った論文は、普通なら事前チェックで弾かれて掲載されないはず。ところが、最近では内容のチェックをほとんどしていないダメ学術誌が蔓延しており、こういった学術誌なら掲載してくれるだろうと見込んで投稿。そして指摘が一切ないまま、あっさりと掲載されました。

 

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(現在は削除されています)

 

あとは突貫工事で「食事健康研究所」という架空の研究所のウェブサイトを作り、プレスリリースを載せるだけ。実はプレスリリースにも、巧妙な仕掛けが施されています。被験者がたった15人とわかれば、少なすぎるという突っ込みが入ります。ところが、プレスリリースには被験者の数はどこにも書いてありません。さらに、具体的な体重減少の数値を書かないことで、過大評価されるようにしています。

 

で、その結果が、最初に紹介した体たらくです。

 

John Bohannon氏「ほとんどのメディアは取材に来なかった。取材に来たメディアも、ほとんどが『なぜチョコレートはダイエットにいいのか。読者に何かアドバイスを』という、つまらん質問ばかり。誰も被験者の数を聞かなかったし、記事内で被験者の数を書いたりもしなかった」