何十年も前、音楽店でアルバイトしていた日本人女性の話を思い出した。会話がまだ完璧でなくても仕事はきちんとしていたという。ある日、お客に「●●のCDは品切れで2日後に入ります」と言ったところ、お客は責任者のところまで確かめに行った。責任者は「彼女はここの従業員だ。彼女がそのCDは今ないと言ったらないのだ」と言ってお客を帰した。それから彼女はさらにやる気がでてきて一生懸命仕事をしたと話してくれた。

 

掃除のおばさんが月1回来てくれるが、「奥さん、これで擦ってはダメですよ。ここは酢をこのように……」と、経験豊富で自信たっぷりな人で、誇りを持ちきちんと仕事をしてくれる。

 

スイスの90%以上の職業は最低時間給2000円をすでに獲得している。それぞれ責任と、ある程度の決定権がある。肉屋さんも、ケーキ屋さんも、マッサージ師も、時計の売り子さんも、皆自分の専門職を無駄がなく合理的に遂行できるように勉強し、厳しい試験を受ける。

 

だから労働者は誇りを持っている。お客はその誇りを応援し、良い仕事さえしてくれれば日本のような丁寧なお辞儀なんかは期待してはいない。労働提供者もお客もお互いに疲労させない工夫をする。それが日常の満足度に代わるのではないか。