日本と欧州を比較したとき、考え方が正反対であることはたくさんあるが、「お客様は神様」の日本に対して、「労働者は神様」という欧州の考え方もそのひとつである。

 

アパートの呼び鈴が2度短く鳴る。これは小包配達の合図だ。すぐに「今行きます」と言って降りていく。本当かどうか知らないが、2、3分で行かないと、郵便局が持って帰ってしまうと聞いているので、スリッパでもいいから引っ掛けていく。ちょうど日本から来ていた客が、「こっちではサービスが悪いと聞いていたけど本当ね。日本なら部屋の前まで持ってきてくれるわよ」と言った。

 

しかしこちらでは、田舎は別かもしれないが、郵便屋さんが都会のアパートで毎日何十という小包を個人宅の戸まで持って届ける労力や時間は無駄であり、仕事の義務には入らないと考える。受取人はありがたく下まで取りにいくのが当たり前。

 

小包配達屋さんは時間を節約しつつなるべく沢山の配達をして、夕方、家族のために健康でエネルギーいっぱいで退社してもらうのが良いと考える。

 

コープ(スイスの代表的なスーパーマーケット)の会計でも、こちらでは100%ベルトコンベアー式で、お客が会計係の都合がいいようにきちんと並べるのが義務になる。いい加減に置くと前後のお客に睨まれる。

 

この間、太った会計のおばさんが並んでいるお客に「待った」という合図をして水を飲みだした。お客はその飲みっぷりを眺め、「あわてないでゆっくり飲んでよね!」とか声をかける。他の客も顔を見合わせ目で笑う。このおばさんは他の従業員より水分が必要なのかもしれない。一息入れて退社時間まで良い条件で仕事してもらいたいと願う。このようなおばさんは親戚に一人ぐらいはいるものなので、寛容になれるのかもしれない。