■研究者でも意見が分かれる実験一時休止案
受精卵や精子・卵子へのゲノム編集は、その効果が次の世代以降にも残るため、より慎重な姿勢を取るべきというのが、大多数の研究者の考えです。国際幹細胞学会は4月23日に、研究者の統一的な合意形成、社会への説明のために、ヒト受精卵や生殖細胞へのゲノム編集実験を一時休止する(モラトリアムを設ける)ように呼びかけています。というのも、今回のように生存できない受精卵を使った研究は、中国だけでなくアメリカでも可能です(アメリカは国による事前審査が必要)。

 

The International Society for Stem Cell Research Has Responded to the Publication of Gene Editing Research in Human Embryos - ISSCR
(ヒト受精卵における遺伝子編集研究の発表に対する国際幹細胞学会の声明)

 

ただし、どのような合意が形成されるかは不透明です。今すぐ医療現場で使用して、ゲノム編集した受精卵を子宮に戻すことはないでしょう。ただ、受精卵や精子・卵子のゲノム編集を全面的に禁止すべきと考える研究者がいる一方で、ゲノム編集の精度向上や遺伝子の機能解明のため、基礎研究に限っては許容されるべきと考える研究者もいます。

 

Ethics of embryo editing paper divides scientists - Nature
(科学者たちを分断する受精卵編集への倫理観)

 

Chinese paper on embryo engineering splits scientific community - Science
(受精卵改変の中国の論文が科学コミュニティを二分する)

 

上の両誌は投稿された論文を掲載拒否しましたが、その理由を明確に説明すべきだという意見もあります。オックスフォード大学の実践倫理に関するニュースサイトでは、どちらかというと今回の論文を好意的に受け入れており、掲載拒否の理由である「倫理的問題」とは具体的に何か、明らかにするよう要求しています。

 

Press Release: The moral imperative to research editing embryos: The need to modify Nature and Science - Practical Ethics
(受精卵編集研究に緊急に求められるモラル、『Nature』誌と『Science』誌を編集する必要性)

 

この記事では、『Nature』誌と『Science』誌が掲載拒否したという事実が他の学術誌に影響を与え、同様の研究を掲載しないような流れになる可能性を危惧しています。

 

なお、最初に紹介した『Nature』誌の記事によると、発生学に詳しい中国の消息筋の話として、中国では他に少なくとも4つの研究グループがヒト受精卵のゲノム編集実験を模索しているようです。