■いつの時代も繰り返される共有地の悲劇
実は、こういった問題は「複雑系の科学」という学問分野において「社会的ジレンマ」と呼ばれ、研究が行われています。数学者や物理学者や心理学者などが共同で研究する場合が多いです。ギャレット・ハーディンという学者が、「共有地の悲劇」という話の中で紹介したのが始まりです。

 

産業革命前のイギリスに、コモンズという牧草地がありました。誰もが自由に羊を放牧できる共有地です。農民たちは自給自足をするために、コモンズで自分たちの羊を放牧していました。

 

そのようなイギリス社会で、産業革命が始まりました。衣服などの大量生産が可能となり、羊毛の需要が高まってきました。需要に供給が追いつかない状態ですから、羊毛を売れば売るほど儲かります。農民たちは、自給自足の量を超えた羊を育てようとし、こぞってコモンズに放牧しました。

 

やがてコモンズは羊で埋め尽くされ、牧草は食べ尽くされてしまいました。エサが足りないので、羊は牧草の根っこまでほじくり返して空腹をしのごうとしました。根絶やしにされたコモンズには、翌年から牧草が生えなくなってしまいました。コモンズは牧草地として使用できなくなり、農民たちは共有地という共通の財産を失うことになったのです。

 

つまり、個人が自分の利益だけを追求して行動すると、最終的には全員が大きな損失を被ってしまうということです。

 

1人の農民にとっては、「自分の羊の群れが1頭増えたくらいでは、コモンズの損失は微々たるものだ」と考えます。確かに、自分1人が増やしただけならば、その考えは正しいです。

 

しかし、コモンズを使用している農民全員が同じように考えて行動すれば、コモンズの壊滅となります。そのことに1人の農民が気付き、自分は羊を増やすことを我慢しても、彼1人だけでは悲劇は防げないです。しかも、自分だけ羊を増やさず、他の人たちが増やしてしまえば、自分だけ一方的に損失を被ることになってしまいます。