■ヒトの生殖細胞を編集しないで

「MIT Technology Review」の記事公開から1週間後、「Nature」は「Don’t edit the human germ line(ヒトの生殖細胞を編集しないで)」という記事を掲載します。

 

Don’t edit the human germ line

(ヒトの生殖細胞を編集しないで)

 

この記事では、現在の黎明期においては、ヒトの生殖細胞内のDNAを改変しないことに科学者は賛同すべきだとして、ヒトの生殖細胞や受精卵を使ったゲノム編集の研究を一時ストップするように呼びかけています。まずはオープンな議論を重ね、研究者・生命倫理学者・政府機関の監視官・一般市民などを巻き込んだルール作りをすべきだとしています。

 

このようなオープンな議論をしないと、鎌状赤血球症やエイズの治療といった本来の有望な使い方と、デザイナーベビーの問題が混合される可能性があると危惧しています(前者は患者だけの影響に留まるが、後者は未来の人類に影響が残るという差異が、一般には認知されていないと指摘)。ルール作りのための議論と、一般への認知にかける時間としての「モラトリアム(一時休止)」を呼びかけています。

 

■ヒト受精卵のゲノム編集に警鐘を鳴らす科学者たち

同日、「Nature」は複数のコメントを紹介する記事を公開します。

 

Scientists sound alarm over DNA editing of human embryos

(ヒト受精卵のDNA編集に警鐘を鳴らす科学者たち)

 

再生医療アライアンス(Alliance for Regenerative Medicine)の長であるEdward Lanphier氏らは、先の記事へのコメントとして、ヒトの受精卵を編集しないように科学者に呼びかけました。ただし、この呼びかけに対して、賛成ばかりではありません。議論は必要であることは理解できるが、遺伝病の治療のためにも研究は続行すべきだという反論です。例えば、上海科技大学のXingxu Huang氏は、2014年にサルの受精卵におけるゲノム編集に成功しており、廃棄されるヒト受精卵を使ったゲノム編集の研究許可を得るために模索しているようです。

 

記事では、法律についても述べています。多くの国では生殖細胞や受精卵の遺伝子改変を禁止する法律またはガイドラインがあります。しかし、これらの法律やガイドラインができた当時にゲノム編集技術はなく、ウイルスなどを使った遺伝子組み換え技術は精度が低いという理由で禁止するものがほとんどです。ゲノム編集は精度が非常に高いため、これらの法律やガイドラインは見直すべきだと述べています。なお、アメリカは政府の承認が必要ですが禁止していません。そのため、未承認のまま行われるという抜け道はあります。