ところが「MIT Technology Review」で報じられた研究は、生殖細胞や受精卵にゲノム編集するというものです。この場合、ゲノム編集した生殖細胞や受精卵から生まれた子どもはもちろんのこと、その孫、ひ孫……と、永遠にゲノム編集の「跡」が残ります。

 

もちろん、本来の研究の目的は「遺伝病の阻止」です。遺伝病を持つ両親から生まれる子どもに遺伝病をもたらしたくない場合、生殖細胞や受精卵にゲノム編集を施し、遺伝病と関係する遺伝子を修復するというものです。すでに、ハーバード医学大学のGeorge Church教授の研究室、バイオテクノロジー企業OvaScience社などでは、ヒトの生殖細胞や受精卵をゲノム編集して、遺伝病の阻止を最終目的として研究に取り組んでいます。ただし、現時点ではヒトの生殖細胞や受精卵を使った実験は行っていないとのことです。

 

なぜ、ヒトの生殖細胞や受精卵を使った実験をしていないのでしょうか。それは、研究コミュニティや一般社会からの反発があるからに他なりません。反発する最大の理由は、ゲノム編集の跡は未来の人類に永遠に残るという、倫理的な問題があるからです。どのような悪影響が出るのかわからないまま、研究を進めるのは望ましくないというものです。

 

また、仮にゲノム編集がヒトで実用化されたときには、最初は一部の富裕層しか使えない可能性が大いにあります。ゲノム編集が遺伝病を防ぐということは、平均寿命やQOLを向上させることにつながります。つまり、富裕層はより長寿でQOLの高い生活を送ることになり、貧困層との格差がさらに広がるという懸念があります。

 

もちろん、いわゆる「デザイナーベビー」の問題もあります。どこまでが病気の治療か、どこからが病気と関係ないものか、その線引きは困難でしょう。その線引きが曖昧なままゲノム編集が普及すれば、目の色や体質などを自由に選べるようになってしまうかもしれません。子どもの運動能力や知性の素質すら操作できるようになれば、格差はさらに広がります。まさに『ガタカ』や『機動戦士ガンダムSEED』のような世界が待っているのです。