「ごはんを炊いたら、底の方から大きく混ぜる」。炊飯の基本手順のひとつです。家庭科でもこう習いますし、料理関連の本にもけっこうそう書いてあります。僕自身もある時期まで習慣でそうしていました。でも一方でずーっと疑問だったのです。うまく炊けたお米はピカピカ、ツヤツヤしておいしそうなのに、混ぜると表面がもっさりして輝きが失われてしまうような気がしていました。

 

混ぜる理由を調べてみると「水分を飛ばす」説、「炊けムラを均一にする」説など諸説あるようですがどうもピンときません。

 

水分を飛ばさなければならないほど水分量が多いなら、炊飯時の水量自体を見直す必要があるでしょうし、その状態ならフタを数十秒開けたくらいでは、水分は飛びません。せめて木製のおひつなど、吸湿性の高い容器に移して、水分を外部に移行させる仕組みが必要になるはずです。

 

また炊けムラですが、昔のかまど炊きで熱源が薪ならば炊きあがりにムラが出るかもしれませんが、いろいろと工夫されたいまどきの炊飯器、しかもたかだか2~3合しか炊かないのに、それほど致命的な炊けムラができるでしょうか。

 

唯一「空気を入れてふんわりさせる」は好みによってはアリかもしれませんし、冷めた時にかたまりにくくなる効果は期待できます。しかしやっぱり炊きたては、そのまま一文字に切るようにすくったほうがおいしい!

 

そう思い続けてきたのですが、だいたいどの家も店も炊きあがったら底から混ぜている。人様のやり方に口を出すわけにもいかず、うーん……。と、一人で勝手にクビをひねり続けてきました。しかし、去年取材させていただいた、三つ星和食店のご店主が「炊きたてごはんはそのまますくうように盛るべし!」と仰るのです。長年、「炊きたてごはんは混ぜねばならんのか」という疑問を抱えていた僕は狂喜乱舞! 理由を聞いてみると「せっかくの“おねば”がもったいない」ということのようです。