■体外受精卵の全染色体数の検査は差別につながるのか
もう1つのニュースである、体外受精卵の全染色体数の検査は、先ほどコメントに出た日本産科婦人科学会の公開シンポジウムのテーマです。

 

着床前検査:全染色体の数を調査 過不足あれば廃棄 日産婦が方針 - 毎日新聞

 

検査を臨床研究として実施する計画案は、すでに昨年の11月に学会の倫理委員会で承認されています。

 

受精卵検査の範囲拡大へ 学会倫理委、臨床研究案を了承:朝日新聞デジタル

 

卵子凍結保存でも述べたように、卵子の染色体異常の多くは出産につながりません。そこで、この臨床研究では「体外受精で3回以上成功しない、または原因不明で流産を繰り返す女性」に限定して、体外受精卵の全染色体数を調べることが有益かどうか検証します。全染色体数が正常、つまる23組46本ある体外受精卵のみを選別するということです。

 

染色体数に異常があると、多くは着床しない、流産という結果になります。そのため、全染色体数の検査は、不妊や流産で苦しむ女性の肉体的・精神的・経済的負担を大きく減らすことができると期待されています。ヨーロッパでは効果があると示されているようですが、これが日本でも当てはまるかどうかが、今回の臨床試験の目的です。

 

一方で、一部の染色体数に異常があっても、出産につながる場合があります。それは13番、18番、21番染色体が3本あるときです。13番、18番染色体が3本あると、出産後1年以内に死亡するケースがほとんど。21番染色体が3本あるのが「ダウン症」と呼ばれるものです。精神発達遅滞や先天性心疾患をもつものの、平均寿命は50歳を超えます。

 

ダウン症患者のなかには、一般的な社会生活を送る人も少なくなくありません。そのため、全染色体数の検査は「障害の差別につながる」と指摘しています。

 

■子どもを育てる環境をどうするか
2つのニュースは「子どもを育てる環境をどうするか」という課題に集約されます。卵子を凍結保存して高齢出産になってもならなくても、働くことと子育てを両立させることは必須ですが、現在の社会ですら両立は難しくなっています。また、全染色体数を検査しても、変異遺伝子に由来する流産や障害は避けられません。誰もが、障害をもつ子どもの親になる可能性はあります。障害をもつ子どもが生まれても、その子どもたちが不利にならないような社会とは、どのようなものなのでしょうか。

 

これらの問題は、女性だけでは解決できません。男性も女性もお互いにサポートして、初めて向き合える問題です。そもそも、不妊の原因は女性だけではありません。女性のみに焦点が当てられることには、あまり感心しません。全ての人、社会が、自分のことであるととらえ、自分ならどうするか考えるべき出来事です。