先週、不妊治療に関するニュースが2つ報道されました。1つは、浦安市が卵子凍結保存を希望する女性に助成金を出すというもの。もう1つは、体外受精卵の全染色体数を着床前に調べる臨床研究を開始するというもの。この2つのニュースは何を問いかけているのでしょうか。

 

■卵子凍結保存は晩婚化・少子化の対策にならない
まず、浦安市の卵子凍結保存に助成金を出すというものです。

 

卵子凍結保存に補助 自己負担3割に 浦安市:朝日新聞デジタル

 

卵子の凍結には100万円ほどかかるところを、自己負担を3割にするというものです。海外では、AppleやFacebookが会社として卵子凍結保存を支援しています。そもそも、なぜ卵子を凍結する必要があるのでしょうか。

 

年齢を重ねるほど、卵子に含まれる染色体数に異常が起きやすくなり、流産につながりやすいとされています。ヒトでは、染色体は23組46本あります。卵子を作るときの細胞分裂で、染色体の分配がうまくいかないことがあり、特に35歳ごろを過ぎると、その傾向が強くなります。いわゆる「卵子の老化」です。この現象を研究テーマにしている研究室もあります。

 

染色体分配研究チーム 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター(CDB)

 

そこで、若いうちに染色体が正常な卵子を凍結保存しておき、年齢を重ねたあとでも出産できる確率を高めようとするのが、浦安市の取り組みです。対象となる女性の年齢が「20歳から35歳くらい」となっているのは、染色体が正常なうちに凍結保存しなければ本末転倒になるからです。

 

注意しなければいけないのは、目的は「染色体が正常な卵子を保存する」ことであり、必ず出産につながるということではない、ということです。高齢出産となれば、母体の体力はどうしても劣り、むしろ出産における負担リスクは上がります。このことは、日本産科婦人科学会も懸念しています。

 

健康女性の卵子凍結助成:日産婦「推奨せず」との考え示す - 毎日新聞

 

卵子の凍結保存は、抗がん剤や放射線治療で、卵子へのダメージが避けられない女性にとっては有力な選択肢になるかもしれません。しかし、単に「晩婚化・少子化」の対策で考えるのであれば、どこまで有益なのかは未知数です。もし、晩婚化・少子化の原因が、一時的に社会活動から離れることへの不安ということであれば、卵子凍結保存は根本的な解決にならないという見方もあります。