●サイボウズワークスタイルムービー「パパにしかできないこと」

 

結論から言うと、サイボウズCM(後述)の試みは現時点で大成功です。だってこれだけ炎上拡散したいま、都会の情報感度の高い共働き子育て層はみんなサイボウズって名前を知っているもの。「グループウェア」なるものを提供している会社だってことも理解したもの。もしかしたら本社の場所や社長の名前も把握したもの。そして、みんな怒りながらなだめながら水を差しながら、たくさん考え、文字にし、話したもの。

 

1月5日の公開から、10日あまり。いったいどれだけの人々のどれだけのエネルギーが、サイボウズの当のCM動画をきっかけに費やされたでしょう。

 

■事前の期待値がまるまる反動
サイボウズCMの第2弾、と聞いて「あー、はいはい(年明けてやっと河崎が仕事するのか)」と瞬間的に思っていただける方には、もうご説明も要らないと承知の上で、ここまでの経緯を。

 

サイボウズのワーママ応援ムービー「働くママたちに、よりそうことを。」の第1弾『大丈夫』が、昨年末、日本の働くママたちの日々の格闘と葛藤を慰撫し、涙腺を直撃して大きな共感を集めたのは、前エントリでご紹介した通り。

 

その第2弾『パパにしかできないこと』が年明けに公開されたのだけれど、あれだけ大きな感動を与えたムービーの続編ということもあり、事前の期待値がまるまる反動となってソーシャル上のワーママ世論はまったく逆のベクトルに大きく振れ、炎上騒ぎとなりました。

 

しばらく他案件に心身を取られ、目の端で「燃えてるな」と炎上ぶりを視認するだけでフォローできていなかったのだけれど、News Dig編集さんからタイムリーにこの件の依頼をいただいたので、議論の推移を復習。特にこちらの「日々の食卓—— サイボウズのCM第2弾「パパにしか出来ないこと」に対する感想を書いたブログ記事まとめ」が優れています。さて、年末から感じていたサイボウズCMへのあれこれを書きます。

 

■「『(育児を)手伝う』ねぇ……」の微かな批判
動画『パパにしかできないこと』は、あちこちで共有され、文字にも起こされています。西田尚美演じるワーキングマザーである「大沢」さんが、「見てよー」と可愛い幼子の動画を見せてくる男性同僚に、「『イクメン』してるねぇ」と受け合いつつ、同僚の発言に「『(育児を)手伝う』ねぇ……」と、やんわりと微修正を加えます。

 

大沢さんが語るのは、彼女自身の経験から、負担だとあえてまとめて大声で言うなら言えなくもないが、結局どうにかやって(やれて)しまって、でもただただ自分がすり減っていく日々の子育て。あれこれを回想し、誰にともなくつぶやきながら、やがて、子育て中の母親が背負っている負荷をそのパートナーだけが軽減できる、「ある手段」を教えるのです。

 

説教するでも熱弁するでも情に訴えるでもなく、さらりと

 

「ママを労ってあげてね」

 

「優しい言葉一つで頑張れちゃうんだよね」

 

「たまには、奥さんのことギューっとかしてあげてください」

 

「奥様のことを抱っこしてあげられるのは、あなただけなんですよ」。

 

激しいトーンを一切まとうことなく、ただ淡々と柔らかに語られた「母親の(最も近い家庭内恊働者であるはずの夫にさえも見えることのない)孤独な格闘」。おそらく「これまで」の共働き母たちの多く、そして現在の共働き母たちの決して少なくない数がそうやって「引き受け」、ひとりで背負ってしまったものです。