2027年開業を目指すリニア中央新幹線の工事実施計画が認可され、いよいよ実現に向けて動き出したばかりなのに、列車愛称をめぐる愛称論争が起こっているという報道があった。何と有力候補は「富士」とのこと。しかし、車窓から富士山なんてほとんど見えないだろうから、富士はナンセンス、それよりも「なにわ」がいいとの主張があるそうだ。「なにわ」は「浪速」と書くからスピード感があってぴったりなのだそうで、特に関西在住者からの発言らしい。

 

富士ヘッドーマーク付きの往年の展望車

 

もっとも、当事者のJR東海は、そんな論争には当惑気味で、まだまだ先の話なので何も決まっていないという。それはそうだろう。10年以上も先の話なので、いくらなんでも早すぎるというものだ。

 

ところで何故「富士」なのか? 別に富士山の近くを通るからだけではない。このような議論が発生したのには、日本の列車の愛称をめぐる歴史を知っておかなければなるまい。

 

 

 つばめヘッドマーク各種

 

明治初期に鉄道が開業してしばらくの間は、列車には愛称がついていなかった。それが、1929年になって東京と下関間を走る特別急行列車に愛称を付けることとなり、一般公募を参考にして、1・2等特急列車を「富士」、3等特急列車を「桜」と命名したのである。翌、1930年には東京と神戸間に「燕(つばめ)」が登場し、わが国鉄道史上に燦然と輝く列車愛称が揃ったのである。

 

「富士」「桜」は、日本のシンボルであり、「富士」は日本一の高さであるから、ナンバーワンの象徴でもある。「燕」は速さの象徴であり、超特急にふさわしい命名として国鉄のシンボルのように扱われてきた。

 

 

 寝台特急「富士」

 

時は流れ、「つばめ」は一旦消え去ったのだが、九州の特急列車名として復活し、その後、九州新幹線の愛称として使われている。一方、「富士」「さくら」は東京発の夜行寝台特急ブルートレインの愛称として長年親しまれたが、相次ぐブルートレインの廃止によって消えていった。ブルートレインの愛称としては「あさかぜ」「はやぶさ」「みずほ」などがあったものの、すべて廃止となり各人の思い出の中を走るのみであった。