営業マン時代に同じ事務所で働く表彰式の常連・スーパー営業マンとして有名なSさんは、ある日お客さんからの問い合わせの電話を取り、数分話した後アポイントを取り、電話を切るなりこう言った。

 

Sさん:「よっしゃ! これは契約だ!」

 

もちろん、その段階で詳しい相談の内容を把握していたわけではない。思うように数字が伸びていない事務所に、景気をつけるための発言だったのかもしれない。

 

しかし、Sさんはその後、本当に月内に契約してしまった。日々、上司からのプレッシャーと暴言にさらされ、ボロボロになりながらハロウィンでもないのに、ゾンビのように案件を求めて担当エリアをフラフラと徘徊を続けるボクには、その先輩がまぶしく映った。だって、電話でちょっと話しただけで、「これは契約になる案件だ!」って分かってしまうんだから。そんないいことったらない。

 

そんなSさんを羨望のまなざしで眺めながら、

 

ボク:「なんで電話で話しただけで契約できるかどうかまで分かるんですか!?」

 

と、不公平感まるだしで聞いたことがある。

 

Sさん:「電話の声の大きさ、滑舌、トーン、抑揚の付け方である程度お客さんのイメージはつけられる。もちろん100%じゃないけど、今までの経験で、8~9割は大体イメージ通りだな」

 

と煙草をふかしながらSさんはそう言った。

 

ボク:「でもイメージが分かっただけじゃ、仕事になるかならないかまでは分からないんじゃないですか」

 

Sさん:「イメージが浮かぶだけで、俺と合うお客さんかどうかが分かるんだよ。今回のお客さんには俺のようなタイプが一番だと思ったんだ。ああ、お前じゃだめだな」

 

ボク:「え? ど、どういうことですか!?」

 

少しむっとするボク。

 

トップ営業マンにもかかわらず、ただのペーペー社員の一見無礼な態度も全く気にしない、懐のでかさを持つSさんは、無礼なボクをバッサリと一刀両断。